パプア(読み)ぱぷあ(英語表記)Papuan

翻訳|Papuan

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パプア」の意味・わかりやすい解説

パプア
ぱぷあ
Papuan

メラネシア地域の人種区分を示す用語として使用されてきたが、人種の概念が曖昧(あいまい)とされ、またメラネシア地域の民族状況があきらかになりつつある現在、人種区分としてはこの用語は使われず、言語区分の用語として「パプア諸語を話す人々」の意味で使われる。「パプア」はマレー語で「縮れ毛」の意味であり、この地域の住民の髪が縮れていることから、この名称が使われた。また、パプア・ニューギニア国内で、かつてイギリス領だった南海岸地域を、北海岸の「ニューギニア」地域と対比させて、「パプア」とよぶこともある。

 メラネシア地域の言語は非常に多様であり、この地域だけで1000以上の言語が存在している。これらの言語は大別すると、オーストロネシア語族とパプア諸語とに分けられる。パプア諸語は互いの関連が不明であることから語族とはみなされなかったため、「諸語」とよばれたり、あるいは「非オーストロネシア語族」などとよばれてきたが、近年、研究が進むにつれ、徐々に互いの関係が解明されつつあり、数種の系統に分類されることがわかってきた。オーストロネシア語族が、メラネシアの海岸部や島嶼(とうしょ)部に多く分布するのに対して、パプア諸語は、インドネシアのハルマヘラ島北部、東チモール(チモール島東部)、ニューギニア島の東部、北部を除く大部分、ニューアイルランド島とニューブリテン島の一部などにその分布を示す。

 この地域の住民は、生業として焼畑農耕を中心とする。主要作物は地域によって異なり、高地ではサツマイモが中心であり、低地ではタロイモヤムイモ、バナナなどのほか、湿地ではサゴヤシからデンプンをとる例もある。家畜としてイヌ、ニワトリの例があるが、ブタが重要であり、儀礼や交換の際に重要な役割を果たす。社会生活の単位は小さく、通常は50人から300人程度で村落を作り、1000人を越える村落はほとんど存在しない。また、世襲による首長は伝統的には存在しない場合が多く、個人の資質により周囲から認められた人物(ビッグマンとよばれる)が政治的な権力を発揮する例が多い。

[豊田由貴夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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