ヒストリア・アウグスタ(英語表記)Historia Augusta

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒストリア・アウグスタ」の意味・わかりやすい解説

ヒストリア・アウグスタ
Historia Augusta

ローマ皇帝ハドリアヌスからヌメリアヌスにいたる 117~284年の期間における皇帝の列伝。ローマ帝政史の重要な史書。『皇帝史』とも呼ばれる。この名称は 1603年 I.カソーボンが命名したもので原名は不明。その体裁は G.スエトニウスの『皇帝伝』によっているが,その直接の継続で,本来ネルウァとトラヤヌス伝をも含んでいたという説もあるが,証拠はない。また本書の著作者と成立年代には多くの学説があってまだ定説はない。写本には4世紀初期の6人の作者が記されているが,彼らは偽作者とし,本書を4世紀末の成立とみなす説もある。本書の立場は明白に異教的であり,したがってその作者または作者たちはおそらく背教者ユリアヌス帝の影響のもとにキリスト教の発展に対決しようとする姿勢がうかがわれる。本書の前半 (ハドリアヌスからカラカラまで) は信頼される史料によって歴史的価値は高いが,後半は一般に信憑性が少いとみなされている。

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