ヒドロキシ安息香酸(読み)ひどろきしあんそくこうさん(英語表記)hydroxybenzoic acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒドロキシ安息香酸」の意味・わかりやすい解説

ヒドロキシ安息香酸
ひどろきしあんそくこうさん
hydroxybenzoic acid

芳香族ヒドロキシカルボン酸の一種で、ベンゼン環ヒドロキシ基-OHカルボキシ基-COOHとが一つずつ結合している化合物をいう。オキシ安息香酸ともよばれていたが、現在ではあまり使われていない。ヒドロキシ基とカルボキシ基の相対的な位置の違いにより3種の異性体が存在する。

[廣田 穰 2015年7月21日]

o-ヒドロキシ安息香酸

o(オルト)-ヒドロキシ安息香酸は別名サリチル酸とよばれる。3種の異性体中でもっとも酸性が強く、もっとも昇華しやすい。食品の防腐剤や皮膚病治療薬として用いられる。この化合物をアセチル化すると解熱剤のアスピリンアセチルサリチル酸)が得られる。サリチル酸のメチルエステルは皮膚から吸収されて鎮痛・消炎作用を示すので、湿布薬・軟膏(なんこう)などの外用鎮痛消炎剤として汎用(はんよう)されている。

[廣田 穰 2015年7月21日]

m-ヒドロキシ安息香酸

m(メタ)-ヒドロキシ安息香酸は無色の針状結晶。熱水エタノールエチルアルコール)、エーテルなどに溶けるが、冷水には溶けない。

[廣田 穰 2015年7月21日]

p-ヒドロキシ安息香酸

p(パラ)-ヒドロキシ安息香酸は無色の結晶。フェノールのカリウム塩を加圧下で二酸化炭素とともに220℃に加熱するとp-ヒドロキシ安息香酸カリウムが生成するので、これを酸で中和すると得られる。アセトン、エーテルに溶ける。この化合物のエステルはカビを防ぐ作用や殺菌力があるので、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、p-ヒドロキシ安息香酸ブチルなどは防腐剤として使われている。

[廣田 穰 2015年7月21日]


ヒドロキシ安息香酸(データノート)
ひどろきしあんそくこうさんでーたのーと

ヒドロキシ安息香酸
  C6H4(OH)COOH
 分子式  C7H6O3
 分子量  138.12

異性体
o-ヒドロキシ安息香酸(2-ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸)

 融点   159℃
 沸点   211℃(20mmHg、分解)
 解離定数 K1=1.5×10-3(25℃)
      K2=4.0×10-14(25℃)

m-ヒドロキシ安息香酸(3-ヒドロキシ安息香酸)

 融点   203℃
 沸点   分解
 解離定数 K1=8.3×10-5(25℃)
      K2=1.1×10-10(25℃)

p-ヒドロキシ安息香酸(4-ヒドロキシ安息香酸)

 融点   216.3℃
 沸点   分解
 解離定数 K1=2.6×10-5(25℃)
      K2=3.5×10-10(25℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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