ヒロハシ(その他表記)broadbill

改訂新版 世界大百科事典 「ヒロハシ」の意味・わかりやすい解説

ヒロハシ (広嘴)
broadbill

スズメ目ヒロハシ科Eurylaimidaeの鳥の総称。この科は,鳴管や脚の腱などの解剖学上の特徴から,スズメ目の鳥類の中でもっとも原始的なグループと考えられている。8属14種からなり,アフリカと南アジアに分布している。全長13~30cm。名のように,くちばしは短く,幅が広い。上くちばしの先端はかぎ状になっている。頭は大きく,全体にずんぐりした体型をしているが,一部の種では尾が長い。羽色は,全体が緑色のもの,暗褐色のもの,頭頸とうけい)部と背面は黒くて腹が濃いピンクのものなど,種によってさまざまである。脚は短く,第3趾(し)と第4趾の基半分は癒着している。

 どの種も,よく茂った森林に生息し,ふつうつがいか小群で生活している。高い木の樹冠部にいることが多く,姿を見ることは比較的少ない。昆虫類と漿果(しようか)を主食とし,大型のものはときどきトカゲなどもとって食べる。水辺の枝やつるに吊巣(つりす)をかけて繁殖する。その巣は,葉木の葉や茎を集めてつくられ,側部に出入口のある大きな袋形で,大きいものは長さ2mに達するといわれている。その他の繁殖生態についてはあまり詳しく調査されていないが,一般に一夫一妻制で,雌雄が巣づくり,抱卵育雛(いくすう)にあたる。

 代表種のミドリヒロハシCalyptomena viridisは全長約18cm。全身緑色で,翼に黒い模様がある。マレー半島,スマトラ,ボルネオに分布する。ガマヒロハシCorydon sumatranusは全長約28cm。この科の最大種で,くちばしが異常に厚く,幅広い。全身黒く,のどは淡黄褐色で,翼に白帯がある。タイ,ベトナムからボルネオまで分布し,ジャングルの高い木の上にいる。オナガヒロハシPsarisomus dalhousiaeは全長約26cm。全身緑青色で,頭部は黒く,のどから後頭にかけて黄色い。水色の尾は長く,この科でいちばん美しい。ヒマラヤからボルネオまで分布し,ジャングルにすむが,数は多くない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒロハシ」の意味・わかりやすい解説

ヒロハシ
Eurylaimidae; broadbills

スズメ目ヒロハシ科の鳥の総称。20種からなり,全長 13~28cm。は長くはないが,その名のように幅が広くて大きい。尾羽は多くの種では短いが,長い種もいる。羽色は多様で,緑色や青色を主色とする美しいものが多いが,森林の樹冠で暮らしているために目立たない。昆虫やクモのほかトカゲやカエルなどもとる。飛びながら昆虫類をとることが多い。巣は水上に張り出した木の枝などにつるすようにしてつくり,2~8個の卵を産む。アフリカサハラ砂漠周辺とヒマラヤ山脈東部から中国南部,東南アジアスマトラ島ボルネオ島フィリピンにかけて分布する。また,近年の遺伝子による分類研究の結果,南アメリカパナマからエクアドルに生息するヒロハシマイコドリ Sapayoa aenigma がマイコドリ科から本科に移された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒロハシ」の意味・わかりやすい解説

ヒロハシ
ひろはし / 広嘴
broadbill

鳥綱スズメ目ヒロハシ科に属する鳥の総称。この科Eurylaimidaeには14種がある。鳴管や足の構造から、スズメ目のなかではもっとも原始的な鳥と考えられている。全長13~30センチメートル、ずんぐりした体つきをしており、嘴(くちばし)は名のとおり幅広く、足は短い。羽色はいろいろであるが、美しいものが多い。インド、ネパールから東南アジアやアフリカに分布し、森林の樹上にすむ。枝葉の間を伝い渡りながら、あるいは枝から空中にぱっと飛び立って、昆虫をとらえて食べる。木の実や草の種子を食べることもある。川の上に突き出した枝上に、側面に入口のある洋ナシ形のつり巣をつくり、多くの種では2、3個の卵を産み込む。巣づくり、抱卵、育雛(いくすう)は雌雄ともに行う。

[樋口広芳]


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