ビタミンB3(読み)びたみんびーすりー(その他表記)Niacin

知恵蔵 「ビタミンB3」の解説

ビタミンB3

ナイアシンと呼ばれるビタミン一種ニコチン酸及びニコチンアミドと同等の生物活性を示す誘導体の総称である。
ビタミンは微量栄養素で、発見ごとにビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、とアルファベット順に命名されたが、後にビタミンではないことが分かったり、化学名で呼ばれるようになったりしたものもあり、現在では13種類だけがビタミンと認められ、名称もとびとびになっている。水に溶ける水溶性ビタミンと、水に溶けず油脂に溶ける脂溶性ビタミンに大きく分けられ、ナイアシンは水溶性ビタミンである。
水溶性ビタミンのうち、ビタミンB群と総称されるビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸葉酸ビオチンの8種類は、発見された当初は単一の成分としてビタミンBと呼ばれたが、後に働きの異なる8種類の成分を含んでいると分かり、それぞれの名前が付けられた。ナイアシンは、1867年に化学的に分離された。
ナイアシンは、アミノ酸であるトリプトファンから肝臓組織において合成される。ほとんどのタンパク質は、トリプトファンを1%程度以上含んでいるため、摂取することが推奨される量を満たすタンパク質を食していれば、ナイアシンを単独で摂取する必要はほとんどない。しかし、かつてトリプトファン含量の少ないトウモロコシを主食としていたアメリカの先住民の間で、下痢、皮膚炎、精神遅滞などを主症状とするペラグラと呼ばれる疾患が流行し、1937年に、ペラグラがナイアシン欠乏症であることが明らかにされた。一般に、ナイアシンが欠乏すると脳の発育、機能が低下する。ナイアシンは、酸化還元酵素の補酵素NAD及びNADPの構成要素として必須であり、酸化還元反応における電子受容体または水素供与体として働く。細胞内呼吸によるグルコースの分解に関わり、ナイアシンが不足すると、細胞内呼吸で生じる物質やエネルギーを作り出せなくなる。NADは細胞の増殖分化シグナル、及びDNAの修復にも関与し、水素と結合した還元型NADPは脂肪酸の合成やステロイドホルモン、コレステロールの合成に関わる。
摂取することが推奨される量(日本人の食事摂取基準 2015 年版による)は、18~29歳の男性で15ミリグラム、女性で11ミリグラム。授乳婦は3ミリグラム多く要する。
ナイアシンは、植物性及び動物性食品に広く含まれ、特に、酵母、肝臓、穀類、豆類、種子類に多く含まれる。

(葛西奈津子 フリーランスライター/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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