日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラーダークリシュナン」の意味・わかりやすい解説
ラーダークリシュナン
らーだーくりしゅなん
Sarvepalli Radhakrishnan
(1888―1975)
インドの政治家、哲学者。南インドで生まれ、マドラス・キリスト教大学を卒業後渡英、オックスフォード大学で学位を取得した。マドラス(現、チェンナイ)にあるプレジデンシー・カレッジ、カルカッタ大学の哲学教授、ベナレス・ヒンドゥー大学の学長(1939~1948)を歴任し、オックスフォード大学教授(1936~1952)にも迎えられた。インド独立後、駐ソ連大使(1949~1952)、副大統領(1952~1962)を務め、1962年には大統領(~1967)に選出された。著作は多く、代表的なものに『インド哲学』2巻(1922~1926)、『ヒンドゥー教的人生観』(1927)、『理想主義的人生観』(1929)、『東洋の諸宗教と西洋思想』(1939)、『バガバッド・ギーター』(1946)、『主要なウパニシャッド』(1953)、『ブラフマ・スートラ』(1960)などがあり、インド政府発行の『東西哲学史』(1952~1953)の総監修者でもあった。比較思想的観点からインド思想の究明に努め、『インド哲学』では、西洋哲学と比較しながらインド哲学を全体にわたって概観し、インド哲学の普遍性を明らかにした。また、『東洋の諸宗教と西洋思想』では、ヒンドゥー教の側から、東西比較思想の基盤を提供した。その哲学的立場はシャンカラ系のベーダーンタ哲学不二一元(ふにいちげん)論にあり、彼は、不二一元論のマーヤー概念に新たな解釈を施して、ベーダーンタ哲学の現代的再生を目ざした。また、主観と客観の対立を超えた神秘的直観の重要性も説いた。
[島 岩 2018年5月21日]
『ラーダークリシュナン著、三枝充悳他訳『インド仏教思想史』新装版(2001・大蔵出版)』