日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ラーマクリシュナ・ミッション
らーまくりしゅなみっしょん
Rāmakrishna Mission
1897年インドに設立された宗教団体。その名を冠されたラーマクリシュナは近代インドの宗教家で、神との合一体験をもち、その体験に基づいてすべての宗教が帰一すると説いた。その弟子となったビベーカーナンダは、ラーマクリシュナに欠ける近代的知性の持ち主で、師の神秘体験をインドの伝統的なベーダーンタ哲学の不二一元(ふにいちげん)論の思想によって補強し、不二一元論のもとで世界の諸宗教の対立が解消されると主張した。ビベーカーナンダはこの思想を1893年アメリカのシカゴで開催された世界宗教会議で発表し、多くの共鳴者を獲得し、その協力を得てその思想の実現のための機関であるベーダーンタ協会を、96年2月にニューヨークに設立した。しかし、そのような運動の拠点はインドにあるべきだと考えた彼は、翌97年5月1日、カルカッタ(現コルカタ)近郊のベルールに、亡き師の名を冠したラーマクリシュナ・ミッションを創設した。このミッションの目的は、ラーマクリシュナの真理を世界に広め、諸宗教の信者の間に友情を育てることである。さらに宗教の本質は奉仕の活動にあるとして、病院の設立や厚生・救護の活動を行い、教育・出版等の事業も推進している。現代インドにおける最大の宗教団体であるばかりか、世界の各地に支部がある。日本にもその支部がある。
[増原良彦]