日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビャークネス」の意味・わかりやすい解説
ビャークネス(Vilhelm Friman Koren Bjerknes)
びゃーくねす
Vilhelm Friman Koren Bjerknes
(1862―1951)
ノルウェーの物理・気象・海洋学者。ビヤルクネスともいう。気象学におけるノルウェー学派の開祖。クリスティアニア(現、オスロ)に生まれ、クリスティアニア大学を卒業。1890年ドイツへ行き、物理学者ヘルツの指導を受けた。ストックホルム、クリスティアニア、ライプツィヒ各大学の数学・物理学教授を務め、1905年アメリカへ渡った。カーネギー研究所の援助を受け、同研究所から『気象力学および海洋力学』Dynamic Meteorology and Hydrographyを刊行(1910~1911)。第一次世界大戦中はノルウェーのベルゲン地球物理学研究所研究員となり、戦争による気象情報の不足を補うため、国内に多数の気象観測所を設け、天気予報の改善に努めた。1926~1932年オスロ大学教授。流体力学の分野でケルビンやヘルムホルツの論じた循環の概念を発展させ、「ビャークネスの循環定理」を提唱した。これは地球の運動に相対的な循環という量を導入したもので、きわめて応用面が広く、気象学、海洋学に活用されている。海洋学では、海中の質量分布から地衡流(ちこうりゅう)を推算する力学計算の基礎となっている。門下から長男のJ・ビャークネスをはじめ優れた気象学者、海洋学者が輩出し、ノルウェー学派は近代気象学・海洋学の先駆となった。流体力学、気象学、海洋学の古典的名著も多い。主著に『Physikalische Hydrodynamik mit Anwendung auf die dynamische Meteorologie』(J・ビャークネスとの共著・1933)がある。
[半澤正男]
ビャークネス(Jacob Aall Bonnevie Bjerknes)
びゃーくねす
Jacob Aall Bonnevie Bjerknes
(1897―1975)
アメリカに帰化したノルウェーの気象学者。ノルウェーの物理学者・気象学者として有名なV・ビャークネスの長男としてストックホルムに生まれる。オスロ大学を卒業後、ベルゲン気象台に勤め、父を助け研究に励んだ。1919年に父の指導のもと「移動性低気圧の構造について」というわずか8ページの論文を発表したが、これは現在だれにでも親しまれている温暖前線や寒冷前線を伴う低気圧の総観的構造を明らかにしたもので、これによって近代気象学の基礎の一つが築かれた。1940年にカリフォルニア大学教授となり、1946年に帰化したが、アメリカに渡ってからの研究で重要なものは大気・海洋相関論であり、現在流行になっているテレコネクションteleconnection(遠隔地相関)についての研究は、すでに1960年代から彼によって手をつけられている。
[根本順吉]