改訂新版 世界大百科事典 「ビール族」の意味・わかりやすい解説
ビール族 (ビールぞく)
Bhīl
インド西部を中心に人口約250万(1981)を数える民族。多くは丘陵地帯で部族生活を営んでいる。その分布は広範囲にわたり,北はラージャスターン,南はマハーラーシュトラ,東はマディヤ・プラデーシュの各州にまたがっている。かつては匪賊としても知られたが,今日はそのほとんどが鋤を用いる農耕を生業としている。言語上はインド語派に属する。形質的には他の孤立した民族よりはむしろカースト・ヒンドゥー(インドのカースト社会で,4バルナに属する一般住民)に近いことが指摘されており,言語の点からも,その定着の歴史の中で隣接する平地のカースト・ヒンドゥーの影響を受けてきたものと思われる。宗教生活では,ヒンドゥー教の影響を受けながらも,土地神崇拝や死者崇拝などの点でカースト・ヒンドゥーとは異なる独自な特徴を保持する集団が多い。しかし,各集団の中にはヒンドゥー教を採用するものもあり,またイスラムを受け入れるものもある。
執筆者:井狩 弥介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報