ピケッティング(読み)ぴけってぃんぐ(英語表記)picketing

翻訳|picketing

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピケッティング」の意味・わかりやすい解説

ピケッティング
ぴけってぃんぐ
picketing

労働争議に際し、工場の入口スクラムや座り込みをして、ストライキをスト破りなどから防衛したり、一般市民にボイコットを呼びかける行動のことで、ピケともいう。ピケ参加労働者の配置される場所をピケ・ラインpicket lineという。語源的には、所有地の周囲に杭(くい)垣picket fenceを巡らすことに由来するといわれる。ピケはストライキの実効性を確保するための補助的かつ不可欠の手段である。しかし、ストライキが単なる労務の不提供という消極的行為であるのに対して、ピケはスト破りや争議から脱落した者の就労阻止したり、原材料搬入や製品の出荷を阻止するなどの積極的行為であるため、どこまでが争議権の正当な行使といえるかが問題となる。この点について、ピケ・ラインでの就労希望者などに対する平和的な説得が許されるにすぎず、バリケードやスクラムなどによる物理的阻止の正当性を否定する説もある。しかし、ピケ・ラインは労使がもっとも鋭く対立する場面であるから、一方の行為だけを切り離して判断することは誤りであり、当該ストライキ全体の経過や使用者の態度などの事情を総合して判断されるべきである。このような立場から、一定実力行使を伴うピケも正当とするのが多数説である。

 なお、一般市民が示威行動(デモなど)の一環として官公庁の入口を占拠する場合などもピケということがあるが、これは「表現の自由」(憲法21条)の問題であって、争議行為とはいえない。

[吉田美喜夫]

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