翻訳|picketing
ピケッティング(ピケともいう)とは,争議行為の参加者が,争議行為の対象となる就労場所である事業場や職場の通用門や出入口で従業員が就労しないように見張りや説得を行う行為をいう。ピケッティングは,数人で行われることもあれば,多数で行われることもある。後者の人垣で設けられた警戒陣をピケットライン(ピケライン)とよぶ。ピケッティングは,通常の争議行為に随伴して行われ,争議行為の実効性を確保することを目的とするが,その態様は多様である。単に就労をしないように説得する程度にとどまるものから,就労従業員の職場への出入りを物理的に妨害阻止する程度に至るもの,さらには会社の製品搬出や原材料搬入をも妨害阻止する出荷阻止の程度を含むものもある。日本では労働組合が従業員組合,企業別組合であるという組織的特質から,ピケッティングは,ストライキへの裏切行為たる就労者の排除と,ストライキからの脱落者に対する監視の機能を強く持ち,ややもすると暴力的契機をはらみがちである。判例はピケッティングの正当性を〈平和的説得の限度〉で認めていると理解されている。平和的説得の範囲にあるか否かは諸般の事情を考慮して法秩序全体の見地から判断され,平和的説得の範囲内にあるときは違法性は阻却され,刑事責任は発生しない。民事責任についても同様である,と理解してよい。学説上は,多数がストライキ防衛的な実力阻止にも正当性を容認する。
執筆者:渡辺 裕
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労働争議に際し、工場の入口でスクラムや座り込みをして、ストライキをスト破りなどから防衛したり、一般市民にボイコットを呼びかける行動のことで、ピケともいう。ピケ参加労働者の配置される場所をピケ・ラインpicket lineという。語源的には、所有地の周囲に杭(くい)垣picket fenceを巡らすことに由来するといわれる。ピケはストライキの実効性を確保するための補助的かつ不可欠の手段である。しかし、ストライキが単なる労務の不提供という消極的行為であるのに対して、ピケはスト破りや争議から脱落した者の就労を阻止したり、原材料の搬入や製品の出荷を阻止するなどの積極的行為であるため、どこまでが争議権の正当な行使といえるかが問題となる。この点について、ピケ・ラインでの就労希望者などに対する平和的な説得が許されるにすぎず、バリケードやスクラムなどによる物理的阻止の正当性を否定する説もある。しかし、ピケ・ラインは労使がもっとも鋭く対立する場面であるから、一方の行為だけを切り離して判断することは誤りであり、当該ストライキ全体の経過や使用者の態度などの事情を総合して判断されるべきである。このような立場から、一定の実力行使を伴うピケも正当とするのが多数説である。
なお、一般市民が示威行動(デモなど)の一環として官公庁の入口を占拠する場合などもピケということがあるが、これは「表現の自由」(憲法21条)の問題であって、争議行為とはいえない。
[吉田美喜夫]
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…また,暴力の行使は刑事責任のみならず民事責任を免除するものでない(労働組合法1条2項)。争議行為の手段態様で具体的に問題とされたものに,生産管理,職場占拠,ピケッティング,サボタージュ(怠業),製品ボイコット,リボン腕章着用闘争,ビラはりなどがある。 第1に生産管理や職場占拠(シット・ダウン・スト)戦術については,会社の所有権を侵害するとして違法説をとるものがあるが,日本の企業別労働組合の特質を考慮して,理想型の生産管理――労働組合が使用者に代わって,従前どおりの通常の方法で会社業務の管理を行い,収入は会社のために保管し,生産・販売等業務に従事する組合員には所定どおりの賃金を生産管理後に支払う形態――や使用者の会社施設の占有を排除せず操業をも妨害しない,単純な滞留型の職場占拠に,正当性を認める学説・判例が多い。…
…労働組合法,労働基準法および労働関係調整法は労働三法といわれる。労働組合法は集団的な労使関係を規律する最も基本的な法律で,労組法と略称する。1949年6月1日に制定され,同日に施行された。
[制定までの経緯と変遷]
戦前にも労組法制定に向けた努力が存在したとはいえ,大正時代から昭和の初頭にいたるまでの間に約20の法案が登場したものの,いずれも日の目をみることはなかった。終戦直後の1945年12月に公布,46年に施行された旧労組法が,日本最初の労組法であった。…
※「ピケッティング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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