日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファイヒンガー」の意味・わかりやすい解説
ファイヒンガー
ふぁいひんがー
Hans Vaihinger
(1852―1933)
ドイツの哲学者。ハレ大学教授。カント、ランゲ、ショーペンハウアーの影響のもとに、プラグマティズム的に解釈された独自の仮構主義(フィクショナリズム)を展開し、それを実証主義的観念論ないしは観念論的実証主義とよんだ。彼によると、思考と認識は生活目的に到達するための手段であるが、直接的な体験の現実を純粋に理論的に認識することはできず、現実との一致という意味での真理を実現することはできない。知識が実際上の価値をもつかどうかが重要であり、論理的に矛盾を犯していても、それは生活のうえで重要な目的を果たしている。知識とは、それが真である「かのようである」ことにほかならず、「われわれの世界の表象形態は仮構の巨大な織物であり、矛盾に満ちている」と唱えた。1897年雑誌『カント研究』を創刊し、1905年にはカント協会を設立して、新カント学派の交流と普及に努めた。著書『かのようにの哲学』Die Philosophie des Als-Ob(1911)など。
[千田義光 2015年3月19日]