日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャンドラセカール」の意味・わかりやすい解説
チャンドラセカール
ちゃんどらせかーる
Subrahmanyan Chandrasekhar
(1910―1995)
アメリカの天体物理学者。イギリス領インドのラホール(現在はパキスタン)に生まれる。チェンナイ(マドラス)のプレジデンシー・カレッジで理論物理学を学び、1930年卒業。ケンブリッジ大学に留学し、1933年に博士号を取得、また同大の特別研究生になった。1937年渡米し、シカゴ大学で準教授を務め、1944年教授に昇格、1986年退職し名誉教授となった。その間、1953年にアメリカの市民権を取得、また学術雑誌『天体物理学』Astrophysical Journalの編集長を務めた。
星の内部構造と進化について研究した。星はその質量によって異なった進化の過程をとる。彼は、太陽の質量の1.4倍を限界点として、それ以上の質量の星は超新星として爆発して進化を終え、それ以下の質量の星は白色矮星(わいせい)とよばれる高温の小さな星となり、やがて終焉(しゅうえん)を迎えるとした。この限界点は「チャンドラセカールの質量限界」とよばれている。このほか、恒星大気の放射輸送、恒星の電磁流体力学的研究、ブラック・ホールの研究などがある。1983年に「天体の構造と進化の物理的過程に関する理論研究」でノーベル物理学賞を受賞。宇宙空間における元素の形成にとって重要な核反応を研究したファウラーとの同時受賞であった。なお、1999年7月に打ち上げられたアメリカのX線観測衛星は、彼の名にちなみ、「チャンドラ」と名づけられた。
[編集部 2018年9月19日]
『S・チャンドラセカール著、長田純一訳『星の構造』(1973・講談社)』▽『S・チャンドラセカール著、中村誠太郎監訳『チャンドラセカールの「プリンキピア」講義――一般読者のために』(1998・講談社)』▽『桜井邦朋著『天体物理学の基礎』(1993・地人書館)』▽『Arthur S. EddingtonThe Internal Constitution of the Stars(1988, Cambridge University Press)』