日本大百科全書(ニッポニカ) 「フイエ」の意味・わかりやすい解説
フイエ
ふいえ
Alfred Fouillée
(1839―1912)
フランスの哲学者、社会学者。ボルドー大学、高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)教授。クーザンやジャネPaul Janet(1823―1899)の系譜で、フランス伝来の唯心論的形而上(けいじじょう)学の立場から、当時隆盛を極めつつあった自然科学の包摂に努力した。意識は力であり観念はそれ自身で行動へと現実化する潜在力をもつ。外的行動は自然科学的研究の対象たりうるが、行為の発意にあたっての自由意志や精神の有効性は認めなければならない。この「イデ・フォルス(観念力)」の思想に立脚して多方面、倫理学、存在論、時代分析に健筆を振るったが、折衷主義の弱みゆえか死後は名声を失った。
[中田光雄]