ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クーザン」の意味・わかりやすい解説
クーザン
Cousin, Victor
[没]1867.1.13. カンヌ
フランスの哲学者。 1815年ロワイエ・コラールの助手としてソルボンヌ大学で哲学史を講じる。 20年反政府活動のかどでソルボンヌを追われ,24年ドレスデンで捕えられ半年の牢獄生活をおくる。 28年大学に復帰,哲学史を講じて空前の人気を博する。 30年の七月革命によって多くの要職が与えられる。 31年ドイツを視察して教育制度に関する有名な報告を書き,それは 33年の F.ギゾーの画期的な初等教育の改革に結実し,40年には教育相となった。やがてナポレオン3世の登場とともに 48年引退して著作と研究に専念した。彼はフランスの大学で初めて哲学史を講じた人であり,その講義録には『哲学史講義』 Cours d'histoire de la philosophie (3巻,1829) ,『近世哲学史講義』 Cours d'histoire de la philosophie moderne (5巻,41~46) ,"Cours d'histoire de la philosophie morale au XVIIIe siècle" (4巻,39~42) などがある。彼の哲学は唯心論的形而上学で,意識を知情意に3分し,それぞれに真美善の問題を対応させるが,3者は独立したものではなく同一であるとする。この統一性を具体的に提示するのが芸術であり,最高の芸術たる詩は人間の全能力の総合である。これが主著『真・善・美について』 Du vrai,du beau et du bien (36) の思想の中核である。
クーザン
Cousin, Jean
[没]1560/1561. パリ
フランスの画家,彫刻家,版画家。フランス歴史画の祖。サンス大聖堂のステンドグラスなど,主としてガラス絵によって知られる。『イブ,最初の女』 Eva Prima Pandora (1550頃,ルーブル美術館) はクーザンの作品といわれる。木版画も多い。著作は『遠近法論』 Traité de perspective (1560) 。『肖像画の本』 Livre de pourtraicture (1571) は同名の息子 (1522~94) が完成。
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