フォボス(読み)ふぉぼす(英語表記)Phobos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォボス」の意味・わかりやすい解説

フォボス
ふぉぼす
Phobos

火星衛星。1877年にアメリカ海軍天文台のホールが、もう一つの衛星デイモスダイモス)とともに発見。軌道半径は約9380キロメートルで、火星表面から5980キロメートルしか離れていない。ほとんど火星の赤道面上の円形に近い軌道を7時間39分余りで公転している。この周期は火星の自転周期より短く、火星から見ると西から昇って東に沈むことになる。フォボスは火星が地球に接近したときでも11等級にしか見えず、大望遠鏡でなければとらえることはむずかしい。火星探査機観測により、その大きさはおよそ13×11×9キロメートルの不規則な楕円(だえん)体で、表面にはクレーターやかき傷のような地形があること、また表面は反射能が著しく低く、暗い色をしていることなどがわかった。

 デイモスとともに火星の引力に捕獲された小惑星であろうとの説が有力である。

[村山定男]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フォボス」の意味・わかりやすい解説

フォボス
Phobos

火星の,内側の衛星。 1877年に A.ホールが発見。光度 11等。公転周期は7時間 39分で火星の1日の約3分の1なので,少くとも火星の1日に2度西から出て東に没することになる。主星からの距離は約 9400kmできわめて近いため,火星の両極地方からは観測することができない。大きさは半径 14× 11× 10kmの不規則な楕円形岩塊で,その長軸は軌道面内にある。 1972年のアメリカのマリナー9号や 76年のバイキング2号の写真によると,表面に数多くのクレータが見られる。 20世紀になって平均運動の増加が観測され,火星の希薄な大気との摩擦によるという見方から,59年にソ連の I.シクロフスキーは,フォボスは中が空洞人工衛星であるという説を出した。 18世紀の F.ボルテールの『理想郷物語』や J.スウィフトの『ガリバー旅行記』にすでに火星の小さな2つの月についての記述があるが,これはおそらく 1610年に J.ケプラーが科学的根拠なしでそのようなことをいったことによるらしい。

フォボス

「デイモスとフォボス」のページをご覧ください。

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