フォントネル(読み)ふぉんとねる(英語表記)Bernard Le Bovier de Fontenelle

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォントネル」の意味・わかりやすい解説

フォントネル
ふぉんとねる
Bernard Le Bovier de Fontenelle
(1657―1757)

フランスの思想家。ルーアン生まれ。大悲劇作家ピエール・コルネイユと、その弟の劇作家トーマ・コルネイユの甥(おい)。初めトーマの影響でいくつか劇作を書いた。彼が脚光を浴びるのは『死者たちとの対話』Dialogues des morts(1683)からで、この作品には、のちに彼が得意とするしゃれた文体で科学思想の普及を説く萌芽(ほうが)がみられる。彼の傑作と目されるのは、1686年に発表した『世界の多数性についての問答Entretiens sur la pluralité des mondesと、続いて世に問うた『神託の歴史』Histoire des oracles(1687)の2作である。前者においては社交界の貴夫人を相手に洗練された対話でコペルニクス真理を語り、後者では奇跡を退け、科学の進歩を説いた。いわゆる「新旧論争」では近代派にくみし、1697年に科学アカデミー会員に選ばれてからは終身書記を務め、自由思想家(リベルタン)と百科全書派アンシクロペディスト)との橋渡し的役割を果たした。まれな長寿を全うした人としても知られる。

[市川慎一 2015年6月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フォントネル」の意味・わかりやすい解説

フォントネル
Fontenelle, Bernard le Bovier de

[生]1657.2.11. ルーアン
[没]1757.1.9. パリ
フランスの思想家,劇作家。イエズス会の学校で法律を学んだのち,叔父のトマ・コルネイユが編集していた雑誌に詩を発表 (1677) して文学への第一歩を踏み出したが,『プシシェ』 Psyché (1679) など初期の劇作は不成功に終わった。『死者の対話』 Dialogues des morts (1683) や『世界の多様性についての問答』 Entretiens sur la pluralité des mondes (1686) などによって学者と大衆の仲介者たる本領を発揮。『神託の歴史』 Histoire des oracles (1687) や『神話の起源』 De l'origine des fables (1689) には,18世紀の啓蒙思想の萌芽がみられる。一方 1687年に始まる「新旧論争」では,『古代人と近代人に関する迂説』 Digression sur les anciens et les modernes (1688) を著し,シャルル・ペローに味方して近代人の優越を主張した。その他『アカデミー会員頌』 Éloges des Académiciens (1699) がある。

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