日本大百科全書(ニッポニカ) 「フラ・ダンス」の意味・わかりやすい解説
フラ・ダンス
ふらだんす
hula dance
ハワイの民族舞踊。女神ラカに仕える巫女(みこ)によって儀式の一部として踊られたもの。叙述的型式の身ぶりによって踊られ、ハワイの歴史や神話の歌詞を伴う。
[市川 雅]
コスチュームとステップ
若い踊り手オロパと、歌と楽器で伴奏をつける年長組のホオパとに分けられ、踊り手は男女とも同じコスチュームを着け、膝(ひざ)まである一種のスカートのパウ、腕輪クペ、そして頭に花輪をかぶる。基本のステップは6種類あり、その組合せによってさまざまに変化する。両足の前への動き、尻(しり)部の振り、尻部の振りを伴ったサイドステップ、膝を曲げての跳び上がり、回転、数回の旋回などである。踊り終わるとき、腕を広げ、指を反らし手をあわせて挨拶(あいさつ)する。
[市川 雅]
歴史
クック諸島(ポリネシア)に古くから伝えられていた民族舞踊を源とする。腰を激しく動かして踊る女性の踊りと、両膝を打ち合わせる男性の踊りであったため、19世紀初めごろからキリスト教が布教されると同時に、動きが猥雑(わいざつ)とされ弾圧された。しかし、20世紀初頭、トーマス・デービス卿(きょう)によりその価値をみいだされ、クック諸島の伝統的民族舞踊となった。1910年、カメハメハ1世をたたえる式典でフラ・ダンスが踊られたことから、それ以後、ハワイを代表するダンスとなった。現在ではほとんど宗教的な意味を失い、観光用に踊られることが多いが、民族の歴史を踊り継ぐものとして再評価されつつある。また、気軽に楽しめる社交ダンスの一つとして一般にも普及しつつある。
[國吉和子]
『和多田悦子著『フラとハワイ フラを楽しむ』(1998・源流社)』