ホーソーン(英語表記)Hawthorne, Nathaniel

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホーソーン」の意味・わかりやすい解説

ホーソーン
Hawthorne, Nathaniel

[生]1804.7.4. マサチューセッツセーレム
[没]1864.5.19. ニューハンプシャー,プリマス
アメリカの小説家。ピューリタンの古い家系に生れ,メーン州の名門ボードゥン大学卒業後,故郷で孤独な創作に従事。 1828年処女小説『ファンショー』 Fanshaweを匿名で自費出版したが,みずから回収する。 30~40年代には,各種雑誌にすぐれた短編小説を発表。一人の少年の人生への開眼をみごとに描いた「ぼくの縁者モリノー少佐」 My Kinsman,Major Molineux (1832) ,17世紀の魔女狩りを背景にした夢魔的な物語「若いグッドマン・ブラウン」 Young Goodman Brown (35) ,人間の限界に挑戦する科学者の罪と罰を扱う「あざ」 The Birthmark (43) などがそのおもなものであり,のちに『トワイス・トールド・テールズ』 Twice-Told Tales (37,増補 42) その他いくつかの短編集にまとめられるが,原罪,孤独など人間の意識の暗い面を象徴的に描いた作品が多い。しかし生活は必ずしも楽ではなく,ボストンやセーレムの税関に勤めた時期もある。 50年に長編緋文字』 The Scarlet Letterを出版,一躍認められ,以後セーレムの屋敷にまつわる罪と呪い,救いの希望を描いた『七破風の家』 The House of the Seven Gables (51) ,作家みずから関係したことがあるユートピア運動「ブルック・ファーム」をモデルにした『ブライズデール・ロマンス』 The Blithedale Romance (52) を発表する。 53~57年にはリバプール領事をつとめ,イタリアにも滞在し,60年にイタリアを舞台に罪とそれによる人間の向上をテーマにした最後の長編『大理石の牧羊神』 The Marble Faunを出版し,帰国。歴史の浅いアメリカでは,現実をそのまま写実的に描写する「小説」よりも,現実から一歩離れたところに想像力を働かせた作品世界を構築するロマンスが適することを主張,実践し,その深層心理的洞察とともに後代のアメリカ小説に多大の影響を与えた。

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