日本大百科全書(ニッポニカ) 「カメオ」の意味・わかりやすい解説
カメオ
かめお
cameo
めのう、サンゴ、水晶などの宝石や貝殻や象牙(ぞうげ)などに浮彫りをしたカメオ細工。また、彫刻の手法で凹形彫刻(インタリオ)に対する凸形彫刻をいう。縞(しま)めのうや皿貝の縞を巧みに利用するもので、通常、暗色の層を背景にして、より明るい色層に浮彫りをする。おもに婦人の装身具に使われている。
起源は紀元前4世紀末といわれ、最古のものは古代エジプトにみられる。優れた作品を生んだ古代ギリシア・ローマを経て、技法はイタリアに受け継がれ、ルネサンス期にはめのうや水晶のカメオが盛んにつくられた。一方、イタリアン・ペッシァという貝殻を用いて、浮彫りはより繊細さを増した。19世紀になると、古いカメオが珍重され、ふたたび大流行をみる。ナポレオン帝政期には装身具はもとより、インテリアにまで用いられた。今日のカメオは、背景色に像が白く浮き上がるシェル・カメオが主で、茶褐色の背景はサルドニア貝、オレンジ色はアフリカ産のコルオウラ貝、バラ色はフロリダ近海のピンク貝などを用いている。市場の大半はイタリア産が占める。図柄は貴婦人のプロフィールやギリシア神が多く、天使、花、鳥など、優雅で古典的なモチーフを踏襲している。
[平野裕子]