スカラベ(読み)すからべ(英語表記)scarab

翻訳|scarab

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スカラベ」の意味・わかりやすい解説

スカラベ
すからべ
scarab

甲虫類に属する昆虫の一群で、タマオシコガネフンコロガシなどとよばれる。獣糞(じゅうふん)を球状にして転がし、餌(え)にしたり、産卵に用いる。古代エジプトでは、その生態に象徴的意義をみ、スカラベの姿神ケプリ(ケペリ)が崇拝された。糞球を運ぶようすを、太陽が天空を東から西に運ばれる姿になぞらえ、ケプリ神は太陽神アトゥムと同一視された。ケプリとは「自ら生まれた者」の意。スカラベは「再生」「復活」「創造」のシンボルとされ、古代エジプトではその意匠は彫刻、印章護符装身具などに用いられた。彫刻ではカルナック神殿の像、大英博物館蔵の巨像が有名。護符にはラピスラズリ、トルコ石、黒曜石ファイアンスなどが用いられ、裏面に所有者名や神像などを彫り、身につけたり、ミイラ包帯に巻き込んだ。やや大形で、裏に「死者の書」を記した「心臓スカラベ」は、ミイラの胸の上に置かれた。

吉村作治


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スカラベ」の意味・わかりやすい解説

スカラベ
scarab

古代エジプト人が神聖視した一種の甲虫,またその甲虫をかたどったエジプトの宝石彫刻の名称。この虫を意味する古代エジプト語ケペレルという語が「生成」の意味にも通じたことから,天地創造の太陽神ケペラのシンボルとして崇拝され,多くの護符や装身具などに作って着用する風習が生じた。虫の腹部にあたるところを平たく研磨して王名や貴人の名を刻んで印章としたり,動物文を刻んだりしたものも多い。ギリシアエトルリアの模造品も出土している。

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