プロタゴラス(読み)ぷろたごらす(英語表記)Protagoras

翻訳|Protagoras

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロタゴラス」の意味・わかりやすい解説

プロタゴラス
ぷろたごらす
Protagoras
(前490ころ―前420ころ)

古代ギリシアの代表的なソフィストトラキア海沿岸の町アブデラに生まれる。30歳ごろからソフィストとしての活動を開始し、40年余りギリシア全土を遍歴、とくにアテネへは頻繁に訪れて、紀元前444年アテネが南イタリアに建設した植民市トゥリオイの憲法起草を委嘱されたと伝えられる。「人間は万物尺度である。在るものについては在ることの、在らぬものについては在らぬことの」ということばで記録された有名な人間尺度説は、普通、真理の基準を個々の人間の感覚に見立てようとする説と解釈されている。そのため、この説は絶対的な真理の存在を否定し、相対主義を標榜(ひょうぼう)するものとされている。そこで、同等な権利を主張する各人各様の判断のうち、いずれを採択したらよいかという問題になるが、ここで、ソフィストたちの教える弱い議論を強くする術(すべ)である弁論術が、自説を押し出すために必要となってくる。令名はとどろき、彫刻家フェイディアスをしのぐ大金をもうけたと伝えられるが、著作はいずれも失われ、現在残っているのは断片ばかりである。

鈴木幹也 2015年1月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プロタゴラス」の意味・わかりやすい解説

プロタゴラス
Prōtagoras

[生]前485頃.アブデラ
[没]前410頃
ギリシアの最初期のソフィスト。トラキアのアブデラの人。シチリアとアテネで初めて報酬を取って教えた。プラトンの対話篇『プロタゴラス』に登場し,ソフィスト哲学とプラトン哲学の対立が浮彫りにされている。彼の思想は「人間は万物の尺度である」という命題に集約されるように,認識の相対性を主張し,絶対的な知識,価値,道徳の存在を否定するものであった。物事が真実何であるかということよりも,何かのように思われることが重視され,その結果,他人を説得し状況を自己に有利なように展開する方法が正当化され,弱論強弁を旨とする説得の技術としての弁論術への道を開いた。

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