翻訳|Protagoras
古代ギリシアの代表的なソフィスト。トラキア海沿岸の町アブデラに生まれる。30歳ごろからソフィストとしての活動を開始し、40年余りギリシア全土を遍歴、とくにアテネへは頻繁に訪れて、紀元前444年アテネが南イタリアに建設した植民市トゥリオイの憲法起草を委嘱されたと伝えられる。「人間は万物の尺度である。在るものについては在ることの、在らぬものについては在らぬことの」ということばで記録された有名な人間尺度説は、普通、真理の基準を個々の人間の感覚に見立てようとする説と解釈されている。そのため、この説は絶対的な真理の存在を否定し、相対主義を標榜(ひょうぼう)するものとされている。そこで、同等な権利を主張する各人各様の判断のうち、いずれを採択したらよいかという問題になるが、ここで、ソフィストたちの教える弱い議論を強くする術(すべ)である弁論術が、自説を押し出すために必要となってくる。令名はとどろき、彫刻家フェイディアスをしのぐ大金をもうけたと伝えられるが、著作はいずれも失われ、現在残っているのは断片ばかりである。
[鈴木幹也 2015年1月20日]
古代ギリシアの思想家で,最も有名なソフィスト。アブデラの出身。国家有数の人物たらんと欲する青少年たちにふさわしい〈徳〉を授けて報酬を得る私的専門教育,すなわちソフィストの術を,一個の職業として確立した人であり,70年の生涯のうち後半40年間にわたって,みずから〈徳の教師〉を名乗りつつ,ギリシア各地を遍歴してすごし,無比の名声を博した。とくにアテナイにはしばしば滞在した。前444または前441年に,アテナイが中心となって南イタリアに大規模な植民都市トゥリオイが建設された際には,新憲法の制定を委嘱されている。数編の著作があったが,わずかな断片しか伝えられていない。有名な〈人間は万物の尺度である〉という言葉は《真理論もしくは打倒論》において主張されたものらしい。プラトンは《テアイテトス》においてその命題をとりあげ,全認識の相対性を意味するものとして,徹底的な分析と批判を行っている。
執筆者:藤澤 令夫
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前480頃~前410頃
代表的ソフィストの一人で「人間は万物の尺度なり」という人間尺度命題で特に有名。いかなることについての判断も判断する当人にとっては正しく,その意味で各人が中心である。だが,そうなると残る道は相手に自説を説得するだけで,そこから「弱い議論を強くする」弁論修辞の学が必要になる。つまり,彼は真理の絶対的基準を否定したのである。
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…訳して詭弁派ともいう。当時の代表的ソフィストは,プロタゴラス(北東ギリシアのアブデラ出身),ゴルギアス(シチリア島のレオンティノイ出身),ヒッピアスHippias(ペロポネソス半島のエリス出身),プロディコスProdikos(エーゲ海のケオス島出身)などで,このほかエウエノスEuēnos,アンティフォンAntiphōn,トラシュマコスThrasymachosらがいる。彼らの活動は国際的で,アテナイを中心に多くの都市国家をわたり歩き,主として富裕な市民家庭の子弟を相手に,金銭を報酬として教育活動を行って人気を得た。…
※「プロタゴラス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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