ヘカテ(読み)へかて(英語表記)Hekate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘカテ」の意味・わかりやすい解説

ヘカテ
へかて
Hekate

ギリシア神話女神ヘシオドスの『神統記』によれば、彼女はアステリアペルセスの娘で、すなわちティタン神族の孫の代に属す。しかし、ゼウスがティタン神族を破って神々の王になってからも、彼女だけは従来の特権を奪われることなく、神々の間で高い尊敬を受けた。そして彼女に帰依する人間に対し、富、雄弁、勝利、漁獲畜産、育児などのあらゆる面で恩恵を授けるとされた。また、地下にさらわれた娘ペルセフォネを探すデメテルに協力したり、ときにデメテルの娘とされるなど、地下界との結び付きも強く、女神アルテミスと同一視されることも多い。このように、彼女は地下の富を地上にもたらす反面、霊界の女王として魔法使いたちの守護神となり、松明(たいまつ)を手に地獄の犬を引き連れて、夜の辻(つじ)などに恐ろしい姿を現すと信じられた。しばしば三面像が三叉路(さんさろ)に祀(まつ)られ、新月の日には金持ちが「ヘカテ夕餉(ゆうげ)」を供えたが、それは貧しい人々の食ともなった。

[中務哲郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘカテ」の意味・わかりやすい解説

ヘカテ
Hekatē

ギリシア神話の女神。ティタンのクリオスの息子ペルセスが,コイオスの娘アステリアと結婚してもうけた娘だが,ゼウスは彼女に,ティタンたちがもっていた天と地と海に支配力を及ぼす大女神の権能を保持することを許したとされる。のちにはもっぱら冥界と夜の世界に属する亡霊魔術の女神とみなされ,古代妖怪が好んで出没する場所と信じられた道の辻に,3つの体または顔をもつ像が立てられ,3つの面相はそれぞれ,セレネペルセフォネアルテミスにほかならないともいわれた。

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