古代ギリシアの女神。その名は〈遠(とお)はたらきの女〉の意。彼女に言及している最古の文献,ヘシオドスの《神統記》によれば,彼女はいずれもティタン神のペルセスPersēsとアステリアAsteria(アポロンとアルテミスの母レトの姉妹)の娘で,ゼウスから大いなる栄誉を与えられて天と地と海における権能を有し,祈りを捧げる人間にあらゆる状況における幸運をさずけるという。しかし彼女はのちに地下の冥界と関係づけられて,夜,魔法,妖怪変化の支配者となり,松明を手にし,地獄の犬どもを従えて三つ辻に出没する恐ろしい女神と考えられた。このため,とりわけアッティカ地方の三つ辻には,3面3体をもつ神像が立てられ,毎月末に卵,犬の肉,魚などからなる〈ヘカテの御馳走〉がそなえられた。彼女はしばしば月の女神セレネSelēnē,さらには月の女神でもありヘカテと同じく〈青年の養育者Kourotrophos〉の称号をもつアルテミスと混同ないし同一視されている。
執筆者:水谷 智洋
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ギリシア神話の女神。ヘシオドスの『神統記』によれば、彼女はアステリアとペルセスの娘で、すなわちティタン神族の孫の代に属す。しかし、ゼウスがティタン神族を破って神々の王になってからも、彼女だけは従来の特権を奪われることなく、神々の間で高い尊敬を受けた。そして彼女に帰依する人間に対し、富、雄弁、勝利、漁獲、畜産、育児などのあらゆる面で恩恵を授けるとされた。また、地下にさらわれた娘ペルセフォネを探すデメテルに協力したり、ときにデメテルの娘とされるなど、地下界との結び付きも強く、女神アルテミスと同一視されることも多い。このように、彼女は地下の富を地上にもたらす反面、霊界の女王として魔法使いたちの守護神となり、松明(たいまつ)を手に地獄の犬を引き連れて、夜の辻(つじ)などに恐ろしい姿を現すと信じられた。しばしば三面像が三叉路(さんさろ)に祀(まつ)られ、新月の日には金持ちが「ヘカテの夕餉(ゆうげ)」を供えたが、それは貧しい人々の食ともなった。
[中務哲郎]
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…漁と関税で経済的に豊かであった。前340‐前339年マケドニア王フィリッポス2世に包囲されたが,その際の守護女神ヘカテのシンボル,三日月と星は,市の貨幣に刻まれ,ギリシアを経てイスラムに伝わった。前3世紀ケルト人の侵入を被った後,前2世紀ローマ帝国に編入され,戦略上の重要地点として市は特権的地位を享受した。…
※「ヘカテ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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