ドイツ北部、北海に浮かぶ小さな島。英語名ヘリゴランド島Heligoland。エルベ川河口部のクックスハーフェン(ハンブルクの外港)から北西へ海上約50キロメートル(所要約2時間)のところにある。面積約1平方キロメートル。赤色砂岩からなり、北海にあるドイツの島のうち岩盤が露出している唯一の島である。島の西側と北側は断崖(だんがい)が海に迫り、もっとも高い崖(がけ)は高さ58メートルに及ぶ。島の低い部分には約600戸の人家が集まり(人口約3000)、種々の保養・観光施設があって保養客、海水浴客でにぎわう。非関税地に指定され、たばこ、アルコール飲料などは本土よりも安い。漁港もあり、ロブスターが名物。
[浮田典良]
フリース人が定住したこの島は、1402年にシュレスウィヒ公領となり、1714年にデンマーク領に入った。ナポレオン1世の覇権のもとでデンマークが大陸封鎖に加わったため、1807年にイギリスに占領され、1814年ウィーン会議でイギリスに割譲された。1890年ドイツ帝国は、イギリスと交渉して東アフリカのドイツ植民地と同島を交換して領有(ヘルゴラント‐ザンジバル協定)、これを海軍根拠地として要塞(ようさい)化した。第一次世界大戦後のベルサイユ条約により軍事施設は撤去されることになったが、1935年ナチス政権下で再武装が進められた。第二次世界大戦末の1945年4月18日、イギリス軍の爆撃で各所が壊滅し、戦後はイギリス海軍が占領したが、52年に旧西ドイツの統治下に返還され、以後保養地として再建された。
[岡部健彦]
エルベ川河口部,クックスハーフェンの北西約50kmの北海に浮かぶ小島。ドイツ,シュレスウィヒ・ホルシュタイン州に属する。南北の長さ1600m,最大幅600m,面積0.9km2,人口約2500。中生代の基盤が露出している島。北西部では高さ60mに及ぶ断崖が連なり,基盤の赤色砂岩層が美しい層理をみせている。古くからフリージア人が住み,漁業を行っていたが,1402年からシュレスウィヒ・ホルシュタイン公国に属し,1714年,デンマーク領となった。その後1807年からはイギリス領となり,90年以後ドイツ領。第2次世界大戦(1945)で人家は壊滅したが,1952年接収が解除され再び帰島が許された。船舶航行の基地であり,避難港としても重要。以前主産業であった漁業は衰退し,現在は観光地として多くの海水浴客,遊覧客を集めている。島の東方1kmには,かつて地続きであった貝殻石灰岩からなる平たんなデュネ島がある。
執筆者:武田 むつみ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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