日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘルトウィヒ」の意味・わかりやすい解説
ヘルトウィヒ
へるとうぃひ
Oskar Hertwig
(1849―1922)
ドイツの動物学者。イエナ、チューリヒ、ボンの各大学に学び、E・H・ヘッケルやネーゲリの影響を受けた。主として海産動物の比較解剖学や発生学に従事し、イエナ大学解剖学教授、ベルリン大学解剖学教授を歴任。ウニの受精に際して精核と卵核が合一することや、割球の位置を変えても正常に発生することを観察した。また精子や卵の形成において減数分裂がおこることを発見した。さらに弟とともに体腔(たいこう)の発生について研究し、「体腔説」を唱えた。進化の問題に関しては、むしろ獲得形質の遺伝を認めて、選択説を排した。主著に『体腔説』(弟と共著、1881)、『ヒトおよび脊椎(せきつい)動物の発生学』(1886)などがある。
その弟Richard(1850―1937)も動物学者で、兄といっしょに多くの研究を行った。ケーニヒスベルク(現、ロシア領カリーニングラード)、ボン、ミュンヘンの各大学の教授を歴任。兄とともに体腔説を唱えたほか、原生動物学、細胞学の研究を行った。主著に前述の『体腔説』のほか、『系統学と新しい生物学』(1927)などがある。
[八杉貞雄]