ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネーゲリ」の意味・わかりやすい解説
ネーゲリ
Nägeli, Karl Wilhelm von
[没]1891.5.10. ミュンヘン
スイスの植物学者。初め L.オーケンに学んだが,植物学を修めるためジュネーブ大学に入って A.P.ド・カンドルに師事。その後,ドイツに戻り,ベルリン大学で哲学を学んだのち,イェナ大学教授 M.シュライデンのもとで植物学の研究を再開。チューリヒ大学私講師,助教授,フライブルク大学教授を経て,ミュンヘン大学教授 (1857) 。シダの造精器や精子を発見し (44) ,植物細胞が細胞壁と原形質の2つの部分より成ることを明らかにする (46) など,細胞学の分野で多数の業績を上げた。また,植物の生長や形態形成において細胞分裂の果す役割に注目し,分裂組織の概念を樹立するなど,植物形態形成学の発展に与えた影響も大きい。細胞に含まれるデンプン粒の形態観察が契機となって,彼はミセルという一種の結晶体の存在を想定し,これが細胞ひいては生物体を構成する単位であると考え,進化,遺伝,発生など,すべての生命現象をミセルに基づいて説明する理論を打立てた。進化の機構に関しては,環境の作用を受けて種が連続的に変化していく可能性を否定し,種の変化は不連続であって,内在的要因のみによると考えた。 G.メンデルから実験結果について批評を求める手紙を受取ったが,その遺伝理論がネーゲリの理論体系と相いれない性質のものであったため,メンデルの研究に意義を認めなかった。
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