住宅などの建物の周囲に造られた開放的なひさし,縁側。ヒンディー語のbaraṇdāがポルトガル語のvaranda(baranda)となり,やがてveranda(h)として定着した。16世紀以後,東南アジアに進出したヨーロッパ人は,温湿な風土にあわせ独特の建築様式(コロニアル・スタイル)を作りあげたが,これは家屋の前面ないし四周にとりつけた高床の深いひさし(ベランダ)がその特徴となっていた。その後これがヨーロッパに逆輸入され,その異国趣味がもてはやされるが,その間にパラディオ主義に影響を与え,古典様式のポーチやロッジアと融合しあう。
幕末から明治初期にかけ,長崎をはじめとする居留地に造られた異人館は,すべてベランダ付きのコロニアル・スタイルで,柱やアーチは古典風ながら,ベランダ天井は薄板を編んだ網代をボールト状に湾曲させた東南アジア風のものが用いられていた。日本人工匠によるいわゆる擬洋風建築では,とくにこうしたベランダが好まれ,明治20年代ころまでは,これが洋風建築のシンボルとみなされていた。
執筆者:福田 晴虔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
部屋に接して建物の外回りに設けられた縁。側面は全部または部分的に開放され、通常は屋根が取り付けられている。ギャラリー形式のポーチ、屋根付きのバルコニーと考えてよい。屋根は多くの場合、規則正しく並んだ柱で支持され、床は、板、石、れんがその他で舗装される。
語源をヒンディー語のbarandah(柱廊玄関の意)にもち、建物内部の生活空間が戸外に延長された部分としての性格を備える。四周に手すりなどを巡らせていることもあり、サンデッキとよばれたりする。近年、日本建築で、縁側の幅を広くとり、サンルーム風にし、茶の間や居間の延長として用いたり、子供の遊び場、植物の栽培などにあてる空間として位置づけることもある。一般に、濡(ぬ)れ縁に比べて、幅が広く、庇(ひさし)が深いので、直接雨露を受けることが少ない。
[中村 仁]
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