ベントゥーリ(その他表記)Lionello Venturi

改訂新版 世界大百科事典 「ベントゥーリ」の意味・わかりやすい解説

ベントゥーリ
Lionello Venturi
生没年:1885-1961

イタリアの美術史家。モデナ生れ。30歳でトリノ大学教授となるが,1931年ファシズムに反対して辞職し,パリ,次いでアメリカへと亡命する。戦後イタリアに戻り1960年までローマ大学の教授。《カラバッジョ研究》(1911)で早熟なデビューをした後,芸術を成り立たしめているのが芸術家をとり巻くその時代の歴史的条件すなわち〈趣味〉と,これを打ち破ろうとする〈創造的才能〉の二つであるという考えに至り,《美術批評史》(1936)で〈趣味〉の歴史を探ろうとする。その後フランス滞在中の印象派研究の成果《セザンヌ》(1936),《ピサロ》等のカタログ,《印象派資料集成》(1939)を刊行し,アメリカにおいては前衛芸術関心を示すなど,きわめて柔軟かつ幅広い活動を続けた。父アドルフォAdolfo V.(1856-1941)もモデナに生まれた美術史家で,鑑定家としての豊かな知識とすぐれた目に支えられて,古代から16世紀までを扱った浩瀚な《イタリア美術史》全23巻(1901-41)で知られる。ローマ大学の教授(1890-1931)も務めた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベントゥーリ」の意味・わかりやすい解説

ベントゥーリ
べんとぅーり
Adolfo Venturi
(1856―1941)

イタリアの美術史学者。北イタリアのモデナ出身。モデナ画廊理事を務め、その後、ローマ大学教授、またイタリア最大の美術雑誌『ラルテ』を創刊ルネサンス美術の巨匠たちについての著書があるが、最大の業績は『イタリア美術史』全25巻(1901~40)を執筆したことである。

 その息子がリオネロ・ベントゥーリLionello Venturi(1885―1961)で、父の後を継いだ。ローマ大学で学び、のちトリノ大学で教えていたが、ファシストに追われてフランスに、ついでアメリカに亡命。戦後帰国してローマ大学教授となる。ルネサンス美術のほか、印象派や現代の美術に関する研究も進めた。邦訳されている著書に『近代画家論』(1941)、『絵画鑑賞入門』(1948)、『現代絵画』などのほか、クローチェの影響がうかがえる『美術批評史』(1945)がある。

鹿島 享]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベントゥーリ」の意味・わかりやすい解説

ベントゥーリ
Venturi, Lionello

[生]1885.4.25. モデナ
[没]1961.8.15. ローマ
イタリアの美術史家。 A.ベントゥーリの子。 22歳でローマ大学の学位を取得,24歳でベネチアの美術学校,ローマのボルゲーゼ美術館の副監督官,30歳でウルビノの国立美術館の主事。その後 17年間トリノ大学美術史教授。 1940年以後アメリカ,メキシコ,イギリス,フランスの各大学で客員教授,45~55年ローマ大学近代美術史教授。専攻はイタリアを中心としたヨーロッパの近世の美術史。主著『美術批評史』 Stòria della critica d'arte (1936) ,『イタリア絵画』 Italian Painting; La peinture italienne (3巻,50~52) 。

ベントゥーリ
Venturi, Adolfo

[生]1856.9.4. モデナ
[没]1941.10.10. ジェノバ
イタリアの美術史家。ローマ大学美術史教授。美術誌『ラルテ』の創刊者。主著『イタリア美術史』 Stòria dell'arte Italiana (1901~36) 。

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百科事典マイペディア 「ベントゥーリ」の意味・わかりやすい解説

ベントゥーリ

イタリアの美術史家。モデナ生れ。1915年トリノ大学教授となり,1931年仏,米に滞在,第2次大戦後帰国してローマ大学の美術史教授に就任。時代の〈趣味〉とこれを打ち破ろうとする〈創造的才能〉の二つが,芸術を成り立たせていると考えた。主著に《ジョルジョーネとジョルジョーネ派》(1913年),《美術批評史》(1936年),《セザンヌ作品総目録》(1936年)等がある。父のアドルフォ〔1856-1941〕も美術史家で,ローマ大学教授を務め,大著《イタリア美術史》23巻(1901年―1941年)がある。

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