日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペルシア人の手紙」の意味・わかりやすい解説
ペルシア人の手紙
ぺるしあじんのてがみ
Lettres persanes フランス語
モンテスキューの書簡体小説。1721年刊。この小説の筋はきわめて簡単である。ペルシアの宮廷での政争に疲れたユスベクは友人リカとともにヨーロッパの知恵を求めて故国を離れ、パリに居を構え、そこで故国の友人、召使い、愛妾(あいしょう)たちと手紙を交換する。やがてユスベクは危急を告げる手紙を受け取る。彼の後宮に混乱がおこり、彼の命令で戦慄(せんりつ)と恐怖が後宮を支配するが、愛妾ログザーヌは彼を欺(あざむ)いたことを光栄に思うと彼に告げて、毒杯を仰ぐ。他方、ユスベクとリカの手紙には摂政(せっしょう)時代(1715~23)のフランスの風俗に対する風刺や社会批判、政治制度に関する哲学的省察が述べられる。むろん著者の真の意図はここに存する。この作品が大成功を収めたのは、ルイ14世の晩年の陰惨な専制政治から解放された当時の世相にぴったり合致していたからである。
[坂井昭宏]
『大岩誠訳『ペルシア人の手紙』上下(岩波文庫)』▽『根岸国孝訳『世界文学大系16 ペルシア人の手紙』(1960・筑摩書房)』