ホウジャク

改訂新版 世界大百科事典 「ホウジャク」の意味・わかりやすい解説

ホウジャク (蜂雀)

鱗翅目スズメガ科の昆虫。この科のガのなかで比較的小型で,主として昼飛性の種を含むグループに対し,ホウジャクという和名語尾で統一している。このグループの中心をなすMacroglossum属は,80種くらい知られ,おもに東南アジアの熱帯や亜熱帯分布している。日本には12種知られているが,種数は南下するに従って多くなる。翅の開張4~6cm。胴は太く,翅は短く細長い。触角は棍棒状。飛翔(ひしよう)力が強く,長い口吻(こうふん)をもち,中南米ハチドリのように,翅を細かく振動させながら静止して,口吻をのばし,花みつを吸うので,humming-bird mothという英名がある。この属では夜行性の種はごく少ない。もう一つのHemans属では,翅の周辺部は黒色や褐色だが,他の部分には鱗粉(りんぷん)がなくて透明で,その姿はある種のハチを連想させる。クマバチの仲間と擬態関係にあるものと推定される。この属は日本に2種分布している。さらにホシヒメホウジャクという小型種がいるが,これはAspleden属に属し,夜行性である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホウジャク」の意味・わかりやすい解説

ホウジャク
Macroglossum stellatarum

鱗翅目スズメガ科。前翅長 20~30mm。体は太く,触角は棍棒状。体と前翅は灰褐色で,前翅には黒褐色の2横帯がある。後翅は橙黄色で,翅底と外縁は濃色,後角は黄色。腹端に鱗毛が叢生し,これを鳥の尾のように広げて飛翔する。昼間活動し,花に集り,飛びながら長い口吻を伸ばして吸蜜する。幼虫の食草はカワラマツバ,オオバヤエムグラ,アカネなど。ユーラシア大陸,北アフリカに広く分布し,日本全土にみられる。近縁ホシホウジャク M. pyrrhostictaは本種に似るが,後翅の外縁が広く黒褐色で,腹部第2~4節の各節側部に黄色斑がある。食草はヘクソカズラ。日本全土,朝鮮,中国,台湾,インドなどに広く分布する。ホシヒメホウジャク Gurelca himachalaは前翅長 17~18mm。黒褐色で,後翅は外縁部を除き橙黄色。前翅外縁に凹凸があり,後縁は湾曲して外縁後角は後方へ三角形に突出する。後翅前縁は先端で強く後方に曲り,先端はやや切断状。食草はヘクソカズラ。日本全土,中国,台湾,インドに分布し,日本産を亜種 G. h. sangaicaという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホウジャク」の意味・わかりやすい解説

ホウジャク
ほうじゃく / 蜂雀蛾
humming-bird hawkmoth
[学] Macroglossum stellatarum

昆虫綱鱗翅(りんし)目スズメガ科に属するガ。はねの開張45ミリ内外。はねは細長く、前翅頂はとがる。前翅は黒褐色、2本の黒色帯があり、横脈上に黒点がある。後翅は赤褐色、外縁と縁毛は黒い。日本全土、ユーラシア大陸の大部分と北アフリカに分布する。幼虫はカワラマツバ、アカネ、オオバヤエムグラなどアカネ科の葉を食べる。幼虫の体色は変異性があり、緑色型や褐色型がみられる。

 スズメガ科のなかでホウジャクという語尾をもつ種が13種知られている。その大部分は昼飛性で、日中活発に飛び回り、しばしば吸蜜(きゅうみつ)のために花を訪れる。ハチドリと同じように、花の近くの空中で飛びながら静止し、長い口吻(こうふん)を伸ばして蜜を吸う。その際、扁平(へんぺい)な腹部の尾毛は扇状に広げられる。飛翔(ひしょう)力が強く、広分布種となったものもあり、本来の生息地より北方で採集されることがしばしばある。

[井上 寛]

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百科事典マイペディア 「ホウジャク」の意味・わかりやすい解説

ホウジャク

ホウジャクガとも。鱗翅(りんし)目スズメガ科。日本,樺太,朝鮮,中国,インド〜ヨーロッパに分布。開張50mm内外,暗灰褐色,後翅は赤褐色。幼虫はカワラマツバを食べる。成虫は夏に現れ,成虫で越冬。ホウジャク類は腹端に毛束があり体は流線型,飛びながら花蜜を吸う。日本にはほかにホシホウジャク,クロホウジャクなど十数種がある。
→関連項目スズメガ

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