ポトフとはフランス語で「火にかけた鍋(なべ)」という意味をもち、フランスの代表的な家庭料理の一つで、澄んだポタージュの一種である。鍋に塊のままの牛肉、野菜類、香辛料を入れて長時間煮込んだもので、煮汁をスープとして食べるだけでなく、いっしょに煮込んだ肉と野菜がメイン料理となり、2品の料理として食することができる。また漉(こ)した煮汁はほかの料理のブイヨンとしても用いられる。主材料となる牛肉は、おもにすね肉、かた肉、もも肉を用い、野菜類はニンジン、タマネギ、カブ、セロリ、キャベツ、ポロネギなどが使われる。ジャガイモなどデンプン質の多い野菜を用いると煮汁が濁るので避けたほうがよい。塊のままの肉と野菜に、香辛料としてブーケガルニを加えて長時間煮込み、ともに形は保ちながらごく柔らかい状態に仕上げる。煮汁は沸騰させると濁りやすいので、火加減は弱火を保つ。できあがりの煮汁は、漉して脱脂をしたうえで調味し、スープとする。肉と野菜は適当な大きさに切って大皿に色どりよく盛りつけ、粗塩(あらじお)、こしょう、マスタード、ピクルス、ホースラディッシュ(ワサビダイコン)などを薬味として添えてスープとともに供する。
[田中伶子]
『辻調理師専門学校監修『料理食材大図鑑 マルシェ』(1995・講談社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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