日本大百科全書(ニッポニカ) 「イヌマキ」の意味・わかりやすい解説
イヌマキ
いぬまき / 犬槇
[学] Podocarpus macrophyllus (Thunb.) Sweet
マキ科(分子系統に基づく分類:マキ科)の常緑針葉高木で、大きいものは高さ30メートル、直径2.5メートルに達する。別名マキ、クサマキ。樹皮は灰白色で、縦に浅く裂け、薄くはげる。葉は互生し、密につき、先は鈍くとがり、革質で全縁、扁平(へんぺい)な線形または披針(ひしん)形で長さ10~15センチメートル、幅8~12ミリメートル。雌雄異株。5~6月に開花する。雄花穂は細長い円柱形で黄白色をなし、小枝の側方に3~5個腋生(えきせい)する。雌花は1個ずつ小柄をもって葉腋につき、緑色の太い花托(かたく)がある。種子は球形で、9~10月に白粉を帯びた緑色に熟し、赤紫色で肉質の花托の上につく。関東地方南部以西の本州、四国、九州、沖縄、さらに中国などに広く天然分布する。材は堅いが割れやすい。耐朽性と耐水性が強く、器具、機械、土木用などにする。シロアリの害を受けないので、暖地では建築材としてよく用いられ、また庭園、公園などに広く植栽され、海辺に近い地方では生け垣または防風樹としてよく用いられる。繁殖は実生(みしょう)と挿木による。変種にラカンマキ(羅漢槇)があり、基本種に比べ葉の幅が狭く、かつ短くて密生し上向きになり、けっして下向きとはならず、白みがある。庭木としてよく用いられ、イヌマキより高価である。また園芸品種に、葉に白条のあるオキナマキ、枝の石化したセッカマキ、葉が細く針状をなすハリハマキがあり、葉が四稜(しりょう)形をなし、果実は多くは奇形のカクバマキもある。和名イヌマキは、昔、スギをマキとよんだ際、この木を卑しんで犬マキといったものであろうという。また、マキは円木(まるき)を略したものだともいわれる。
[林 弥栄 2018年5月21日]