改訂新版 世界大百科事典 「マネシツグミ」の意味・わかりやすい解説
マネシツグミ (真似鶫)
mockingbird
スズメ目マネシツグミ科の鳥の1種,またはマネシツグミ科の鳥の総称。マネシツグミMimus polyglottosは全長約25cm。一見ツグミ類に似た鳥だが,尾が比較的長い。背面は灰色で,風切羽や中央尾羽は黒く,下面は白い。翼の白帯と白い外側尾羽は,飛翔(ひしよう)時によく目だつ。くちばしはツグミ類よりやや細長く,脚も弱い。アメリカ合衆国,メキシコ,西インド諸島に分布する。農耕地,人家近く,公園などの茂みにすみ,漿果(しようか),種子,果実などの植物質と昆虫類とをほぼ半々に食べている。低い木ややぶの中に,小枝や枯茎などを雑に組み合わせて,かなり大きな皿形の巣をつくる。1腹の卵は3~5個。この鳥はすぐれた歌い手として多くの人に親しまれ,また他の鳥の声などをまねるのがうまい。
マネシツグミ科Mimidaeは13属約31種よりなり,カナダ南部からアルゼンチン北部まで分布している。とくに中央アメリカと西インド諸島にすむものが多い。北アメリカで繁殖する種はおもに渡り鳥である。全長20~30cm。形態は一般にマネシツグミに似て,尾が長い。しかし,ツグミモドキ類Toxostoma(英名thrasher)はくちばしがやや長く,下に湾曲している。羽色はさまざまだが,多くの種は背面が灰色か褐色,下面は背面より淡色である。生息環境も種によって異なり,農耕地,公園,果樹園,林縁,湿地などのほかに,灌木が散在する半砂漠地方にすむ種もいる。マネシツグミ類はみな非常に複雑な歌を自由にさえずる。このため,ちょっと聞くといろいろな鳥の声をまねているようだが,実際は物まねではなく,自分の歌を歌っていることが少なくないらしい。たとえば,物まねじょうずのマネシツグミでさえ,物まねは彼らの歌唱の10%程度であるという報告がある。カナダ南部,アメリカ合衆国東部・北西部で繁殖するネコマネドリDumetella carolinensis(catbird)もマネシツグミ科の1種で,ネコの声に似た鳴声で有名。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報