精選版 日本国語大辞典「切手」の解説
きっ‐て【切手】
〘名〙
[一]
① ある定まった目的・用途をもつ物や銭を、その関係から切り放し、別の性格をもつ「切物」とする権利を付与する証文。中世の切符、為替(かわし)、割符(さいふ)、年貢などの貢租の預状(あずかりじょう)などをいう。
※上杉家文書‐(永正五年)(1508)一一月二三日・倉俣実経外五名連署奉書「古志郡内御料所土貢事、御屋形様被レ直二御位一候之間、如二切手一復二前々一、急度御進納尤候」
※梅津政景日記‐慶長一七年(1612)三月一八日「道中の御切手、爰元に無レ之候」
※浮世草子・世間娘容気(1717)六「御関所あって、御切手(キッテ)なくては」
③ ある場所にはいることを認めて発行する券。入場券。
※雑俳・田みの笠(1700)「おづおづと切手を出す芝居口」
※新聞雑誌‐三一号・明治五年(1872)二月「文部省、博物館に於て博覧会を催さる。〈略〉切手を以て拝観することを許さる」
④ 営業などの許可証。
※人情本・恩愛二葉草(1834)三「昔拙弾(かじ)った三味線が役に立ったも悲しい事、仁太夫さまの切手を貰うて、漸う繋ぐ細い命」
※多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後「ビスケットの鑵や、呉服の切手まで貰ってある」
⑥ 江戸吉原大門の通行証。遊女が外出する時、抱え主の発行するこれを番所に見せた。
※雑俳・柳多留‐二三(1789)「切(きッ)手を見せて田楽を喰いに行き」
⑦ 金銭預かりの証文。借用手形。金銭切手。
※当代記(1615頃か)四「只切手にて黄金を借引す」
⑨ 「ゆうびんきって(郵便切手)」の略。
※太政官日誌‐明治四年(1871)一月二四日「今般新式郵便之御仕法御開相成候に付、駅々継立方、切手売捌取締向等」
⑩ 明治初年、鉄道など、乗り物の乗車券。切符。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「賃銭は、上車の後に車を管するもの来り、切手の手合にて収む」
[二] (「きりて(切手)」の変化した語) 相手を切りつける方法。切り方。
※幸若・景清(室町末‐近世初)「長刀のきってには、こむ手、なく手、ひらく手」
[語誌]((一)⑨について) 明治三年(一八七〇)、新式郵便の実施を前に、前島密(まえじまひそか)が、国家が料金を収納したことを証する Postage stamp に対応する語として「切手」を採用した。明治初期は手形や入場券などもまだ「切手」と呼んでいたため、「郵便切手」「賃金切手」と呼ばれることもあった。
きれ‐て【切手】
〘名〙
① 気前のいい人。金ばなれのよい人。
※洒落本・北川蜆殻(1826)上「全躰おまはんは、粋のきれてじゃによって、あそこからも、ここからも、たてられなさるでなア」
② 物事をてきぱきと処理する人。決断の速い人。きれもの。
※洒落本・船頭深話(1802)一「あの子はここの内中うでの濶人(キレテ)だ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報