日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンナン」の意味・わかりやすい解説
マンナン
まんなん
mannan
D-マンノースをおもな構成成分とする多糖の総称。マンノグリカンmannoglycanともいう。一般に単糖が多数(10以上)脱水結合(脱水縮合)してできた多糖をグリカンglycanと総称する。マンノースはアルドヘキソース(アルデヒド基をもつ六炭糖)の一種である。アルドヘキソースはアルデヒド基(-CHO、この炭素を1番目とする)と5番目の炭素についたヒドロキシ基(-OH)が分子内反応をすると6員環(炭素五つと酸素一つからなる)を形成する。この環状構造の糖を一般にピランという化合物にちなんでピラノースと総称する(環状構造になる前の構造を鎖状構造という)。6員環構造のマンノースをマンノピラノースとよぶ。鎖状構造のアルデヒド基の炭素(不斉炭素ではない)は環状構造では不斉炭素となるため2種類の異性体ができる。これらをα(アルファ)、β(ベータ)と区別する。β-マンノピラノースからなるものをβ-マンナン、α-マンノピラノースからなるものをα-マンナンという。また、一方のピラノースの1番目の炭素についたヒドロキシ基が、他方の4番目の炭素についたヒドロキシ基と脱水結合する場合を1→4結合といい、6番目の炭素についたヒドロキシ基と脱水結合する場合を1→6結合という。
植物にはβ-マンナンが多い。ヤシ科植物の種子に含まれるマンナンはβ-D-マンノピラノースがβ-1→4結合した直鎖構造であり、X線回折像はセルロースに似ている。また、グルコースとマンノースからなる多糖をグルコマンナンという。一般にコンニャクマンナンとよばれている多糖は、D-グルコピラノースとD-マンノピラノースが約1対1.6の割合でβ-1→4結合し、部分的にアセチル化されたものである。また、ガラクトースとマンノースからなる多糖をガラクトマンナンという。ダイズ種皮のガラクトマンナンはD-マンノピラノースとD-ガラクトピラノースが1対1.7の割合でβ-1→4結合したものである。
微生物のマンナンはほとんどの場合α-マンナンである。酵母細胞表層に存在するマンナンは、マンノピラノースがα-1→6結合して主鎖をつくり、この2番目の炭素に多数の側鎖(マンノピラノースが1~3個結合したもの)がα-1→2結合した構造をしている。酵母マンナンは還元末端でポリペプチド鎖に共有結合しているため、マンノプロテインともよばれる。
[徳久幸子]
人体との関係
コンニャクの根茎やユリの球根などに含まれるコンニャクマンナンは、マンノースとグルコースを構成糖として含む。食物繊維の一種で、人間の消化管には消化酵素がないが、腸内微生物には分解能力をもつものが知られている。
[不破英次]