日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズダニ」の意味・わかりやすい解説
ミズダニ
みずだに / 水蜱
water mite
節足動物門クモ形綱ダニ目前気門亜目Hydrachnellaeのうち水生の種類の総称。七上科、44科を含み、世界で約3000種、日本からは約300種が知られている。湖沼、河川、渓流、湧泉(ゆうせん)、地下水、海など幅広い水域に生息する。また、淡水産二枚貝やタニシの外套腔(がいとうこう)内にすむ種類もある。体は卵形、楕円(だえん)形のものが多く、まれにウジムシ形の種類もある。体の大きさは0.5~1.5ミリのものが多いが、小さいものは0.3ミリ、大きいものは5ミリに及ぶ種類もある。体色は、黄、茶、褐、赤、橙(だいだい)、緑、青などの美しい種類が多いが、地下水性ミズダニ類はほぼ無色である。海産種はおもに赤色である。
肉食性で、ミジンコ、カイミジンコ、ユスリカの幼虫などを食う。湖沼性の種類は、水草につかまっているもの、泳ぐもの、水底の泥土上をはうものなどがある。川や渓流の種類は流水中の石面に張り付いている。海産種は、磯(いそ)の海藻につかまったり、石や死んだ貝の殻についたり、またプランクトンとして浮遊しているものもある。淡水産貝類寄生のものは、その外套腔内にすみ、体壁や外套膜の粘液を吸収する。
発生過程は、卵から6本脚(あし)の幼虫、8本脚の若虫を経て成虫(親)になる。若虫と成虫は自由生活で微小動物を捕食するが、幼虫はカ、ユスリカ、ブユ、ヌカカ、カワゲラ、トビケラ、コオイムシ、アメンボ、ミズカマキリ、コミズムシ、ゲンゴロウなどの成虫に寄生する。地下水性種の生活史は未詳である。ヒトや家畜、魚類に加害するものはない。
[今村泰二]