改訂新版 世界大百科事典 「ムシクイ」の意味・わかりやすい解説
ムシクイ (虫喰)
leaf warbler
スズメ目ヒタキ科ウグイス亜科メボソムシクイ属Phylloscopusの鳥の総称。40種が含まれる。全長10~15cm。羽色はほとんどのものが目だたない褐色や黄色や緑色をしている。ヨーロッパからアジアにかけて広く分布し,森林の樹上にすむ。ウグイス亜科の中で,森林の樹上で生活するようになったのがこのムシクイ類といえる。どの種も羽色がよく似ているため,外観によって区別することはむずかしいが,種によってさえずりがはっきりと違っている。例えば,日本で繁殖するムシクイ類の中で,メボソムシクイはチョリチョリチョリチョリとさえずり,センダイムシクイはチョチョビーと,エゾムシクイP.tenellipesはヒーツーキーと,イイジマムシクイP.ijimaeはチュルチュルチュルとさえずる。枝葉の間をすばやく動き回りながら昆虫やその幼虫をとって食べる。繁殖期には雌雄がつがいになり,ある広さの面積をなわばりとして防衛し,その中で繁殖する。巣は入口が横についた球形で,地上または樹上につくる。卵は白色か,白地に褐色斑があり,1腹の卵数は3~6個。抱卵は雌だけが行い,育雛(いくすう)は雌雄ともに行う。繁殖終了後,秋までには南方の温暖な地方に渡る。日本で繁殖するものは,東南アジア,マレー諸島,フィリピンなどで越冬する。夏の終りから秋の渡りの季節には,1,2羽のムシクイがシジュウカラ類の群れに混じっていることがある。
なお,ヨーロッパやアフリカには,森林の樹上でムシクイ類と同じような生活をする別属のハッコウチョウ類Sylviaやオリーブムシクイ類Hippolaisがいる。これらも広い意味ではムシクイ類といえる。
執筆者:樋口 広芳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報