六訂版 家庭医学大全科 「メタノール中毒」の解説
メタノール中毒
メタノールちゅうどく
Methanol poisoning
(中毒と環境因子による病気)
どんな病気か
メタノールを、お酒(エタノール)と間違えるなどして誤って飲んだり、管理の悪い工場や事故などで高濃度のメタノールの蒸気を吸い込むと、頭痛、めまい、
原因は何か
メタノールもエタノールも、体に入ると“酔い”をもたらします。ただし、エタノールは体内で比較的害の少ないアセトアルデヒドから無害の酢酸に分解されるのに対して、メタノールは有害なホルムアルデヒドから有害な
メタノールは、燃料、溶剤として、また各種の化学薬品、医薬品の原料として広く用いられています。そのため誤飲の機会も多く、また工場などで、急性、慢性に吸入することも多くあります。
症状の現れ方
急性中毒の場合、メタノールを飲む、あるいは吸入してから半日~1日程度は、エタノールを飲んだ時と同じような
翌日から頭痛、めまい、腹痛、悪心、嘔吐のほか、目がかすんだり、物が二重に見えたりし始めます。また、代謝性アシドーシス(血液が酸性になること)も生じます。
1週間以内に、視神経
慢性中毒の場合は、視力障害が起こります。
検査と診断
急性中毒の場合は、飲んだり吸い込んだりしたものがメタノールであることを知ることが大切ですが、それが困難な場合は、尿中にメタノールを検出することが役立ちます。さらに、前記の症状、とくに眼の症状と代謝性アシドーシスが診断の手がかりになります。視力障害がみられる時は、視神経の萎縮と視野の狭窄の有無を調べます。
慢性中毒の場合は、眼の所見と尿中メタノールの量を調べます。
治療の方法
メタノールを飲んで1時間以内なら、吐かせたり、胃を洗浄して、できるだけメタノールが体内に入らないようにします。メタノールもエタノールも同じ酵素(アルコール脱水素酵素など)で分解されるので、エタノールがたくさんあるとメタノールの分解が阻害されて遅くなり、有毒な蟻酸などができにくくなります。したがって、エタノールを経口または点滴で多量に与えることが最も有効な治療になります。
重症の場合には、
病気に気づいたらどうする
まずできるだけ吐かせ、次にお酒をたくさん飲ませて、症状がなくても必ず救急病院に搬送してください。
関連項目
栗原 伸公
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報