アフィン幾何学(読み)あふぃんきかがく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アフィン幾何学」の意味・わかりやすい解説

アフィン幾何学
あふぃんきかがく

ユークリッド幾何学から長さ、角の概念を取り去った幾何学アフィン幾何学affine geometryという。ユークリッド幾何学より一般的であるが、射影幾何学より特殊な幾何学である。平面上の任意の斜交座標系に関して一次式
  x′=ax+by+p,y′=cx+dy+q,
  ad-bc≠0
によって与えられる点対応(x,y)→(x′,y′)をアフィン変換という。アフィン変換によって変わらない図形性質を研究する学問がアフィン幾何学で、擬似(ぎじ)幾何学ともいわれる。x、yが一次式lx+my+n=0を満たせば、x′、y′も一次式を満たすので、直線はアフィン変換によって直線に移る。すなわち、直線はアフィン幾何学的概念であり、したがって、「3点が1直線上にある」「3点が三角形をつくる」はアフィン幾何学で意味をもつ。また「2直線が平行である」もアフィン幾何学的概念であるが、長さ、角に関する性質は意味をもたない。円はアフィン変換で楕円(だえん)に移ってしまうので、アフィン幾何学ではこれらを区別できない。ユークリッド幾何学は、アフィン幾何学のなか一つの特別な計量(長さの定義)を持ち込んだ幾何学であり、別の計量を入れれば別の幾何学ができる。逆にいえば、アフィン幾何学は、多くの計量幾何学から計量に無関係な共通の性質を抜き出して調べる幾何学、ということができる。二次元の場合について述べたがn次元でも同様である。

[立花俊一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アフィン幾何学」の意味・わかりやすい解説

アフィン幾何学
アフィンきかがく
affine geometry

擬似幾何学ともいう。一般的にいえば,アフィン空間の中で構成される幾何学のことで,F.クラインが,『エルランゲン目録』において主張した立場によれば,アフィン変換によって不変な性質を研究する幾何学といえる。たとえば,線分,三角形,四角形は,アフィン変換によってそれぞれ線分,三角形,四角形に移り,円は楕円に移るが,線分の長さ,角,大きさなどは変化する。それゆえ,長さや角の概念はアフィン幾何学の対象とはなりえない。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android