改訂新版 世界大百科事典 「タイヨウチョウ」の意味・わかりやすい解説
タイヨウチョウ (太陽鳥)
sunbird
スズメ目タイヨウチョウ科Nectariniidaeの鳥の総称。この科は,アフリカおよび南アジアを中心に旧世界の熱帯,亜熱帯と南半球に広く分布し,5~8属約106種に分類される。全長9~22cm。大多数の種はスズメ大以下の小鳥で,雄は金属光沢を帯びた赤色,緑色,青色,紫色,黒色などの羽毛をもち,その美しさは新世界のハチドリ類に匹敵する。太陽鳥の名もこの美しさに由来する。しかし,雌は一般にオリーブ緑色のような色で,非繁殖期には雄もくすんだ色になるものがある。くちばしは細く,多少とも下に曲がる。
主として花みつと花に集まる小昆虫やクモ類を食べている。花みつ食の点もハチドリに似ているが,ハチドリとの間には直接の類縁関係はなく,ミツスイ科,ハナドリ科,メジロ科などに縁が近い。花みつのとり方はミツスイやメジロなどと同様で,ハチドリのように飛びながらみつを吸うことはほとんどない。生息環境は多少とも開けたところを好み,ジャングルの樹冠部,開けた森林,林縁,灌木林,公園などさまざまな場所の花に飛来する。行動は非常に活発で,つがいか小群でたえず花や虫を求めて動き回り,留鳥であるが,1日のうちにも季節的にもかなり遠くまで移動する。ある報告によれば,1日に130kmも移動した例がある。繁殖期の雄は非常にけんか好きで,採食および繁殖のためのテリトリーをもっている。多くの種では,巣は横に入口のついた長い袋形で,植物の繊維や葉を織ったりクモ糸でつづってつくられ,木の枝などから垂れ下がっている。この巣はうまくカムフラージュされ,あたかも枝にひっかかったくずのように見える。1腹の卵数は2~3個。営巣,抱卵,育雛(いくすう)は主として雌がする。ただし,生活史のわかっていない種がかなり多い。クモカリドリArachnothera(英名spider hunter)はタイヨウチョウ科の特殊な1属で,約10種に分類され,ヒマラヤからマレー諸島まで分布している。羽色は雌雄とも黄緑色で,くちばしが非常に細長く,大きく下に曲がっている。森林や林縁にすみ,他のタイヨウチョウのように花みつや小昆虫も食べるが,クモ類を主食としている。この鳥は,大きな葉の下にはりつけた袋状の巣をつくる。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報