ヨウ化アンモニウム(読み)ようかアンモニウム(英語表記)ammonium iodide

改訂新版 世界大百科事典 「ヨウ化アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

ヨウ(沃)化アンモニウム (ようかアンモニウム)
ammonium iodide

化学式NH4I。無色結晶室温では立方晶系(α形)で,塩化ナトリウム型構造,格子定数7.244Å。比重2.511。-17.6℃以下では塩化セシウム型構造(β形),格子定数4.37Å。-41.6℃以下ではγ形となる。γ形では正四面体のNH4⁺がN-H…Iの水素結合によって四面体対称となっているのに,β形では一定の方向を向いていないため立方体対称となっている。熱すると551℃で昇華する。潮解性であり,また感光性がある。水100gに対する溶解度154.2g(0℃),250.3g(100℃)。エチルアルコールメチルアルコールグリセリンに溶け,エーテルに難溶。ヨウ化カリウムと硫酸アンモニウムとの反応溶液から硫酸カリウムを除き,生成する結晶をエチルアルコールから再結晶してつくる。あるいはアンモニア水過酸化水素ヨウ素を反応させても得られる。

 2NH3+I2+H2O2─→2NH4I+O2

ヨウ素化合物の原料となる。光および湿気で分解しやすく,黄色となるので密栓して暗所で保存する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨウ化アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

ヨウ化アンモニウム
ようかあんもにうむ
ammonium iodide

ヨウ化水素アンモニウム塩ヨウ化水素酸(ヨウ化水素の水溶液)をアンモニアまたは炭酸アンモニウムで中和すると得られる。また、ヨウ素にアンモニア水と過酸化水素水とを加え、水浴上で加熱、濃縮することによっても得られる。無色、潮解性の結晶。感光性があり、光によって黄色ないし褐色に変色する。水によく溶け、エタノール(エチルアルコール)、メタノール(メチルアルコール)、アセトン、グリセリンにも溶ける。ヨウ素化合物の原料となる。

[鳥居泰男]


ヨウ化アンモニウム(データノート)
ようかあんもにうむでーたのーと

ヨウ化アンモニウム
  NH4I
 式量  144.9
 融点  ―
 沸点  235℃(真空中)
 比重  2.511
 結晶系 立方
 屈折率 (n)1.7031
 昇華点 551℃
 溶解度 167g/100g(水15℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「ヨウ化アンモニウム」の解説

ヨウ化アンモニウム
ヨウカアンモニウム
ammonium iodide

NH4I(144.94).ヨウ化水素酸にアンモニアまたは炭酸アンモニウムを作用させるか,ヨウ素にアンモニア水および過酸化水素水溶液を加えると得られる.無色の吸湿性結晶.551 ℃ で昇華する.水,エタノール,アセトンに易溶,エーテルに難溶.空気または光にさらすとヨウ素が遊離して,黄色ないし褐色となるので,暗所に保存する必要がある.ヨウ素化合物の製造原料,医薬品(去たん剤,利尿剤),写真などに用いられる.[CAS 12027-06-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨウ化アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

ヨウ化アンモニウム
ヨウかアンモニウム
ammonium iodide

化学式 NH4I 。無色,無臭の潮解性結晶,あるいは粒状粉末。空気および光に触れると黄褐色に変る。加熱すると一部分解し,一部昇華する (551℃) 。比重 2.56。水,アルコールに可溶。写真用薬品,医薬品として用いられる。

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