改訂新版 世界大百科事典 「ヨウ素酸カリウム」の意味・わかりやすい解説
ヨウ(沃)素酸カリウム (ようそさんカリウム)
potassium iodate
化学式KIO3。正塩および酸性塩KH(IO3)2が普通に知られている。正塩は無色単斜晶系結晶。わずかにひずんだペロブスキー石(灰チタン石)CaTiO3型構造。したがってIは6個のOに囲まれており,独立したIO3⁻は存在しない。原子間距離I-O2.23Å。75℃と220℃に転移点があり,最高温相は菱面体格子。室温相は強い複屈折と強い圧電気が認められる。融点560℃(分解を伴う)。塩素酸塩,臭素酸塩よりは安定であるが,有機物などの可燃性物質と混ぜて熱するか,衝撃を与えると爆発する。水100gに対する溶解度4.7g(0℃),32.2g(100℃)。エチルアルコール,液体アンモニアに不溶。塩素酸カリウムを塩酸酸性でヨウ素と反応させ,生ずる酸性塩との混合物を水酸化カリウムで中和して得られる。このとき塩酸の濃度が高いと酸性塩が得られる。いずれも分析用標準物質や沈殿剤として用いられる。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報