改訂新版 世界大百科事典 「飼料添加物」の意味・わかりやすい解説
飼料添加物 (しりょうてんかぶつ)
家畜,家禽(かきん),魚類の養分の補給,成長の促進ならびに健康の維持増進,飼料効率の改善,畜産物の商品価値の向上あるいは飼料の変質を防止し保存性を高めることなどを目的として,飼料に微量に添加されるもの。近年,家畜,家禽,魚類の養分要求量や栄養素の利用の特徴などが明らかになるとともに,微量ながらも必要なビタミン,ミネラル,アミノ酸などの飼養上の重要性が認識されることになった。そこであらゆる飼育条件下でこれらが不足することがないように,動物の成長過程,飼養の目的に応じて,不足しやすい物質をあらかじめ飼料に添加することが盛んになった。この場合,栄養補給のためには,さまざまなビタミン,ミネラル,アミノ酸類が飼料に添加される。集約的な家畜,家禽,魚類の飼育時に発生しやすい疾病の予防のためには抗生物質,抗菌剤,駆虫剤が添加され,また飼料の保存性をよくするためには,防カビ剤,抗酸化剤,および防虫剤が添加される。成長の促進のためには,抗生物質,ホルモン剤,有機ヒ素剤,表面活性剤,酵素添加物が添加され,畜産物の商品価値の向上のために,たとえば卵黄色やブロイラーの肉色向上のためには着色剤が添加される。そのほか飼料費の節約のために反芻(はんすう)動物の飼料中に尿素を混合したり,食欲増進に甘味料,香料を加えることもある。
飼料添加物は栄養学の進展とともに種類が多くなり,配合飼料の品質の改善に大きく役だっている。その一方,抗酸化剤や抗生物質などは,使用方法によっては家畜に被害がでたり,有害な畜産物を生産するおそれもあるので,その乱用による薬づけ畜産が問題になった。そこで食品の安全性を確保する観点から,畜産物の生産資材である飼料や飼料添加物の製造・使用などに関する規制が,〈飼料安全法(略称)〉の1975年改正において法制化された。これによって,国民に安全な畜産物を供給し,かつ生産者側も不利益を被らないような配慮がなされることになった。
→飼料
執筆者:宮崎 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報