化学式KBr。俗にブロムカリまたは臭剝(しゆうぽつ)(〈ぽつ〉はカリウムを意味する英語potashの略による)ともいう。無色立方晶系の結晶,岩塩型格子。融点748℃,沸点1393℃。比重2.75(25℃)。屈折率1.5594。水100gへの溶解度53.5g(0℃),65g(25℃),104g(100℃)。エチルアルコール,エーテルに難溶。飽和水溶液にエチルアルコールまたは臭化水素酸を加えて急速に結晶させると結晶ルミネセンスによる発光がみられる。アンモニア水によく溶け,KBr・4NH3をつくる。水溶液は臭素を溶かし,付加化合物KBr3,KBr5などをつくる。生体内で臭化物イオンにもとづく大脳皮質中枢の興奮抑制作用を示す。工業的には,水酸化カリウム熱水溶液に臭素を作用させ,蒸発乾固後,炭素と熱して副生臭素酸カリウムを分解してつくる。
6KOH+3Br2─→5KBr+KBrO3+3H2O
2KBrO3+3C─→2KBr+3CO2
鉄くずと臭素に過熱水蒸気を作用させて生ずるFeBr2・2FeBr3を炭酸カリウムと熱しても得られる。
FeBr2・2FeBr3+4K2CO3─→8KBr+Fe3O4+4CO2
写真用,鎮静就眠薬,試薬,赤外用プリズム(波長12~25μm),赤外吸収スペクトル測定の錠剤法の媒質などに用いられる。
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
カリウムと臭素の化合物。俗にブロムカリというが正しくない。天然の鉱物中にもみいだされるが、工業的には臭素を水酸化カリウム水溶液と反応させて製造する。
3Br2+6KOH
―→5KBr+KBrO3+3H2O
副生する臭素酸カリウムの分離には、冷却して結晶化する方法がとられるが、一部母液に残留するものは、二酸化硫黄(いおう)で還元して臭化カリウムに変えられる。このほか、臭化水素と水酸化カリウムを混合、反応させる方法も用いられる。白色結晶性の固体。水によく溶け、アルコールにも溶ける。単結晶は可視部から波長25マイクロメートルまでの赤外線に対して透明なので、赤外線分光測定用のプリズムや錠剤の媒質として多用される。また、写真用臭化銀の製造原料、現像液、化学用試薬、神経鎮静剤に使用される。
[鳥居泰男]
臭化カリウム
KBr
式量 119.0
融点 730℃
沸点 1435℃
比重 2.75(測定温度25℃)
結晶系 立方
屈折率 (n) 1.5594
溶解度 53.5g/100g(水0℃)
KBr(119.00).工業的には,水酸化カリウムの温水溶液に臭素を作用させ,蒸発乾固して木炭粉と熱し,生成する臭素酸カリウムを還元してつくる.無色の等軸晶系結晶で岩塩型構造.格子定数a = 0.6586 nm.融点730 ℃,沸点1435 ℃.密度2.75 g cm-3.水に易溶,エタノール,エーテルに難溶.アンモニア水にはKBr・4NH3をつくって溶ける.水溶液は臭素と作用してKBr3,KBr5などの付加物を生じる.写真用臭化銀の製造,化学用試薬,医薬品(鎮静剤),せっけん,赤外線分光器のプリズム(単結晶)および錠剤用媒質などに用いられる.[CAS 7758-02-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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