日本大百科全書(ニッポニカ) 「灰チタン石」の意味・わかりやすい解説
灰チタン石
かいちたんせき
perovskite
複酸化鉱物の一つ。ペロブスカイト(ペロウスカイト)ともいう。鉱物としてばかりでなく、原子配列の一つの基本形としてペロブスカイト型化合物(一般式はMXO3)というように用いられ、地下深部の超高圧条件下で上記の形を有する化合物のなかに、この構造をとる物質があることが予想されている。ちなみにこの一般式でのほかの形の原子配列としては、チタン鉄鉱型構造FeTiO3があるが、これは結合半径のやや大きい鉄(Fe)と小さいチタン(Ti)の2種の金属イオンからなる結晶構造であり、ペロブスカイト型は結合半径の大きいMと比較的小さいX(M、Xはイオンを表す)がつくるものである。アルカリ深成岩、キンバレー岩、超塩基性岩、カーボナタイト中に産するほか、高温生成でケイ酸分に比較的乏しいスカルン中にも産する。CaTiO3という式を基調として、きわめて著しい化学組成変化を示すことでも有名である。自形は立方体、あるいはこれを基調とした立体で、基本的に等軸晶系の高温相の形態を保持する。斜方晶系の低温相への転移による原子の変位はごくわずかである。命名はロシアの鉱物学者ペロウスキー伯爵Count Lev Alexeevich Perovsky(1792―1856)にちなむ。
[加藤 昭]