ロシア・ソ連の物理学者。ウクライナ地方ロムヌイ生まれ。ペテルブルグ高等工業専門学校を卒業して技師になったが、物理学に転じた。ドイツのミュンヘン大学に学び、レントゲンの指導を受け、1905年に卒業。翌1906年帰国してペテルブルグ高等工業専門学校に務め、ペテルブルグ大学の講師も務めた。ロシア革命後はレニングラードX線研究所の物理・工学部門を主宰し、カピッツァやN・セミョーノフら多くの人材を育てた。1926年にはアメリカに渡り、マサチューセッツ工科大学とカリフォルニア大学で結晶物理学を講じた。誘電体の物理学の研究から出発して半導体物理学に到達した。とくにその技術的応用に着目し、半導体熱電対の理論と応用を開発、正孔の概念に達し半導体光電池を製作するなどの業績をあげた。また固体物理学全般にわたって指導的役割を果たした。ソルベー会議の国際委員会メンバー(1930~1948)、国際物理学連合副会長(1957)などを務め、レーニン勲章ほか多くの栄誉を受けた。
[藤村 淳]
アメリカの土壌学者。近代土壌学を確立したドクチャーエフの土壌成因論を継承してアメリカでのペドロジー研究を発展させ、マーバットに次ぐ業績を残した。その著『ペドロジー』Pedologyはマーバットの死の翌年(1936)に初版が刊行され、その第2版(1949)は第二次世界大戦後、日本の土壌研究者に広く読まれた。アメリカの土壌研究は、1960年に発表された革命的ともいわれる「土壌分類案」を生んだが、それ以前のいわば古典的分類法に基づく生成分類体系の最高業績がヨッフェの『ペドロジー』に結集されている。
[浅海重夫]
ソ連の外交官。ユダヤ系の富裕な商人の家庭に生まれ、10代から革命運動に加わった。ベルリン大学で医学、チューリヒ大学で法学を修めた。ロシア社会民主労働党に所属し、党内ではトロツキーに近い立場をとった。投獄と流刑を経て1917年、革命下のペトログラード(サンクト・ペテルブルグ)で活動、トロツキーのグループとともにボリシェビキ党に迎えられた。革命後、外交の分野で頭角を現し、ブレスト・リトフスク講和の全権代表団の一員、ついでソビエト政府初代駐ドイツ大使となった。さらに22年に駐中国大使に就任、23年1月に孫文と共同宣言を発表し、翌月には日ソ国交回復交渉のため訪日して東京市長後藤新平と会談を行うなど、初期ソ連外交に重要な役割を演じた。20年代を通じて党内スターリン派の台頭を批判し、トロツキーの追放とジノビエフの除名に抗議して自殺を遂げた。
[原 暉之]
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ソ連邦の外交官。クリミア半島シンフェロポリの裕福なユダヤ人商人の子。早くから社会主義運動に参加し,1902年ロシア社会民主労働党に入党した。のちベルリン大学とチューリヒ大学で医学と法学を学んだが,この間もトロツキーらと革命運動をすすめ,17年ボリシェビキ党に加わった。十月革命後は外交に手腕をふるい,ブレスト・リトフスク条約の交渉をはじめ多数の外交交渉を手がけた。23年には日ソ国交回復交渉のために来日した。ドイツ(1918),中国(1922-23),オーストリア(1924-25)の各駐在大使を歴任した。早くから神経症を病んでいたが,27年党内闘争の激化に直面し,前途を悲観して自殺した。
執筆者:横手 慎二
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(外川継男)
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1883~1927
ソ連の革命家,外交官。ユダヤ人。1919年ボリシェヴィキに加入,革命政権で外交を担当。1917年独露休戦に調印した。23年には上海で孫文と,東京で後藤新平と交渉。トロツキー派として左遷され自殺した。
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…このころアメリカ石油資本が北樺太油田開発の着手を試みて日本海軍を強く刺激し,また,極東ソ連領漁業もソビエト政府が支配して極東共和国合併以前の漁業条約を無効とするなどの政策を推進した。これらの懸案打開のため,後藤新平は中国にいたソビエト全権代表A.A.ヨッフェを日本に招いて私的会談(後藤=ヨッフェ会談)をもち(1923年3月7日~6月16日),さらにこれを駐ポーランド公使川上俊彦との予備交渉に引きついだ(1923年6月28日~7月31日)。これらの交渉では北樺太問題,尼港事件問題,宣伝禁止問題が論議され,のちの日ソ間交渉の地ならしの役を果たした。…
※「ヨッフェ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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