ヨッフェ(読み)よっふぇ(英語表記)Адольф Абрамович Иоффе/Adol'f Abramovich Ioffe

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨッフェ」の意味・わかりやすい解説

ヨッフェ(Abram Fyodorovich Ioffe)
よっふぇ
Абрам Фёдорович Иоффе/Abram Fyodorovich Ioffe
(1880―1960)

ロシア・ソ連物理学者。ウクライナ地方ロムヌイ生まれ。ペテルブルグ高等工業専門学校を卒業して技師になったが、物理学に転じた。ドイツのミュンヘン大学に学び、レントゲンの指導を受け、1905年に卒業。翌1906年帰国してペテルブルグ高等工業専門学校に務め、ペテルブルグ大学の講師も務めた。ロシア革命後はレニングラードX線研究所の物理・工学部門を主宰し、カピッツァやN・セミョーノフら多くの人材を育てた。1926年にはアメリカに渡り、マサチューセッツ工科大学とカリフォルニア大学で結晶物理学を講じた。誘電体の物理学の研究から出発して半導体物理学に到達した。とくにその技術的応用に着目し、半導体熱電対の理論と応用を開発、正孔概念に達し半導体光電池を製作するなどの業績をあげた。また固体物理学全般にわたって指導的役割を果たした。ソルベー会議の国際委員会メンバー(1930~1948)、国際物理学連合副会長(1957)などを務め、レーニン勲章ほか多くの栄誉を受けた。

藤村 淳]


ヨッフェ(Jacob Joffe)
よっふぇ
Jacob Joffe
(1886―1963)

アメリカの土壌学者。近代土壌学を確立したドクチャーエフの土壌成因論を継承してアメリカでのペドロジー研究を発展させ、マーバットに次ぐ業績を残した。その著『ペドロジー』Pedologyはマーバットの死の翌年(1936)に初版が刊行され、その第2版(1949)は第二次世界大戦後、日本の土壌研究者に広く読まれた。アメリカの土壌研究は、1960年に発表された革命的ともいわれる「土壌分類案」を生んだが、それ以前のいわば古典的分類法に基づく生成分類体系の最高業績がヨッフェの『ペドロジー』に結集されている。

[浅海重夫]


ヨッフェ(Adol'f Abramovich Ioffe)
よっふぇ
Адольф Абрамович Иоффе/Adol'f Abramovich Ioffe
(1883―1927)

ソ連の外交官。ユダヤ系の富裕な商人の家庭に生まれ、10代から革命運動に加わった。ベルリン大学で医学、チューリヒ大学で法学を修めた。ロシア社会民主労働党に所属し、党内ではトロツキーに近い立場をとった。投獄と流刑を経て1917年、革命下のペトログラード(サンクト・ペテルブルグ)で活動、トロツキーのグループとともにボリシェビキ党に迎えられた。革命後、外交の分野で頭角を現し、ブレスト・リトフスク講和の全権代表団の一員、ついでソビエト政府初代駐ドイツ大使となった。さらに22年に駐中国大使に就任、23年1月に孫文と共同宣言を発表し、翌月には日ソ国交回復交渉のため訪日して東京市長後藤新平と会談を行うなど、初期ソ連外交に重要な役割を演じた。20年代を通じて党内スターリン派の台頭を批判し、トロツキーの追放とジノビエフの除名に抗議して自殺を遂げた。

[原 暉之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨッフェ」の意味・わかりやすい解説

ヨッフェ
Ioffe, Adolf Abramovich

[生]1883.10.22. シンフィロポル
[没]1927.11.17. モスクワ
ソ連の革命家,外交官。 1902年ロシア社会民主労働党に入党,メンシェビキとして活動。 12年逮捕されシベリア流刑となった。 17年の二月革命後ボルシェビキに入党し,十月革命後外交官として活動。 18年ブレスト=リトフスク講和会議の首席代表となり,22~23年北京で中ソ国交回復交渉にあたり,22年日本と極東共和国 (1920~22年にシベリアに成立した中間的な緩衝国家) との長春会議に参加,23年上海で孫文と共同宣言を発表した (→孫文=ヨッフェ共同宣言 ) 。 L.トロツキー除名の直後,ピストル自殺をとげた。

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