国際法上の宣言は,本来,ある国家あるいは複数の国家の政策表明として行われるもので,一方的な意思表示を意味する。しかし,ときには国家間の合意を内容とする場合がある。この場合は広義の条約の一種ということができる。たとえば,1956年の日ソ共同宣言などはそれにあたる。第2次大戦後における日本とソ連の国交回復に関して,本来ならば平和条約方式によるのが望ましかったわけであるが,最大の懸案事項であった領土問題について合意に至らず,この問題を棚上げしたまま,とりあえず国交を回復するために,正式の条約よりも軽便な方式である共同宣言という形式を採ることになったといえる。このように,共同宣言は条約としてまとめるにはなんらかの支障があり,しかしながらある目的の実現の必要性に迫られているというような場合に採られる,国家的合意の便宜的な方法ということができる。
共同宣言には,批准を必要とするものとそうでないものとの2種類がある。日ソ共同宣言は前者である。日ソ共同宣言は取極(とりきめ)の内容が多岐にわたり,交換公文の形式を採るにはあまりにも煩雑になるきらいがあり,平和条約は後に締結することになっているという事情の下に採られた方式である。内容的には重要な国家間の合意であったことから,批准を必要としたのは当然といえる。
執筆者:岡村 尭
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