らし

精選版 日本国語大辞典「らし」の解説

らし

〘助動〙 (活用は「〇・〇・らし・らし・らし・〇」。ラ変動詞・形容詞(カリ活用)・形容動詞およびラ変型の活用をする助動詞には連体形、右以外の動詞・助動詞には終止形に付く。推量の助動詞。語形変化をしないが、「ぞ」「こそ」の結びとしての用法があるのでそれぞれ連体形・已然形も「らし」とする。上代では、「こそ」の結びは「らしき」で、普通にはこれを形容詞の形に照らして、連体形とする。確定的な事実に対する推量を表わすが、思いをめぐらして想像するといったものではなく、事実に対する志向作用を表わす。そこで「らし」の表わす推量を特に「推定」と呼ぶことが多い)
根拠を示し、現実の状況を推定するを表わす。
(イ) 根拠と事実とを二文または条件句などを用いて示す場合。
古事記(712)下・歌謡「浅茅原 小谷を過ぎて 百(もも)伝ふ 鐸(ぬて)ゆらくも 置目(おきめ)(く)良斯(ラシ)も」
(ロ) 根拠と事実とを係助詞「は」などを介して一文で表わす場合。
万葉(8C後)三・三五七「縄の浦ゆそがひに見ゆる沖つ島こぎみるは釣しす良下(ラしも)
② 確定的な事実の原因・理由を推定する意を表わす。
※古事記(712)下・歌謡「汝(な)が御子や 遂に知らむと 雁は卵産(こむ)良斯(ラシ)
③ 原因や根拠などにかかわらず、ある事柄について推定する意を表わす。
※万葉(8C後)三・三四〇「古の七の賢しき人たちも欲りせしものは酒にしある良師(ラシ)
[語誌](1)語源については、「あり」を形容詞化した「あらし」とする説、「あるらし」「けるらし」「なるらし」の縮約形とする説などがあるが、未詳。
(2)上代では、確定的な事実に対する推量であるが、「疑」字を「らし」と読む場合もある。
(3)中古には、疑問表現を受ける例も現われ、確定的な事実ばかりでなく、未定の事実も対象とするようになった。
(4)中古半ばには、すでに古語(歌語)であり、現代語の助動詞「らしい」は、近世以後成立した別語である。しかし、意味の上ではかなり近い。

らし

〘助動〙 ⇒らしい

〘接尾〙 ⇒らしい

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉「らし」の解説

らし[助動]

[助動][○|○|らし|らし(らしき)|らし|○]活用語の終止形、ラ変型活用語の連体形に付く。
客観的な根拠・理由に基づいて、ある事態を推量する意を表す。…らしい。…に違いない。
「もえわたる草木もあらぬはるべには山辺に急ぐ鹿ぞ踏むらし」〈宇津保春日詣
根拠や理由は示されていないが、確信をもってある事態の原因・理由を推量する意を表す。…に違いない。
水底(みなそこ)の月の上より漕ぐ舟の棹(さを)にさはるは桂なるらし」〈土佐
[補説]語源については「あ(有)るらし」「あ(有)らし」の音変化説などがある。奈良時代には盛んに用いられ、平安時代には1の用法が和歌にみられるが、それ以後はしだいに衰えて、鎌倉時代には用いられなくなった。連体形・已然形は係り結びの用法のみで、また奈良時代には「こそ」の結びとして「らしき」が用いられた。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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