日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラドラム鉄鉱」の意味・わかりやすい解説
ラドラム鉄鉱
らどらむてっこう
ludlamite
第一鉄の含水燐酸塩(りんさんえん)鉱物の一つ。同構造の含水燐酸塩は知られていない。系統分類上、化学式が同型のスターリングヒル石sterlinghillite(化学式Mn3[AsO4]2・4H2O)と一括されているが異論がある。自形はb軸方向に伸び、c軸方向にやや平らな柱状のものが多い。熱水鉱脈型鉱床の脈石鉱物として産する。いわゆる燐酸塩ペグマタイトの一構成鉱物として、初生燐酸塩鉱物よりやや遅れて生成される。日本では栃木県日光(にっこう)市足尾鉱山(閉山)の熱水鉱脈の脈石鉱物として産する以外に報告はない。
共存鉱物は足尾鉱山の場合は石英だけであるが、燐酸塩ペグマタイトの場合はトリフィル石triphylite(LiFe2+[PO4])、トリプル石triplite(Mn2+2[(F,OH)|PO4])、トリプロイド石triploidite(Mn2+2[OH|PO4])、藍鉄鉱(らんてっこう)、フッ素燐灰石fluorapatite(Ca5(PO4)3F)など。同定は比較的淡い緑色、条痕(じょうこん)もわずかに青色味を帯びる。一方向に完全な劈開(へきかい)と劈開面上の真珠光沢。命名はイギリスの鉱物収集家ヘンリー・ラドラムHenry Ludlam(1824―1880)にちなむ。
[加藤 昭]