ランプレヒト(読み)らんぷれひと(英語表記)Karl Lamprecht

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ランプレヒト」の意味・わかりやすい解説

ランプレヒト
らんぷれひと
Karl Lamprecht
(1856―1915)

ドイツ歴史家牧師の家に生まれる。ゲッティンゲン大学ライプツィヒ大学に学ぶ。ボン大学(1885~90)、マールブルク大学(1890)を経てライプツィヒ大学教授(1891~1915)となる。この間ライプツィヒ大学総長(1910~11)も務め、同大学に「文化史・世界史研究所」を設立し、地方史や歴史地理学の研究をおこした。彼は中世経済史を専攻し、その最初の著作『中世ドイツの経済生活』(4巻、1885~86)は、膨大な農業関係史料を利用し、統計的方法も駆使して、経済史研究として画期的なものであった。当時ドイツ歴史学の主流は、政治史、事件史に関心を集め、歴史をもっぱら個人の行為としてとらえ、一般化を拒否した。これに対しランプレヒト民衆の経済生活や社会制度に光をあて、類型法則を重視した。このような歴史観は、主著『ドイツ史』(前半、第1~5巻、1891~95)においてさらに一歩進められ、歴史の対象を政治、経済、社会、文化の広範な分野に拡大し、歴史学を法則科学として樹立することを説いた。このため、1890年代歴史学界の主流との間に激しい方法論争が闘わされた。しかし、人間生活の基本要因を心理にみいだし、歴史の発展象徴主義、類型主義、因習主義、個性主義、主観主義の5段階に分けるという彼の主張には無理があり、先述の論争でも孤立したままに終わった。また『ドイツ史』の後半第6~12巻(1904~09)も前半のように高い評価を得られなかった。

[木谷 勤]

『ヴェーラー編、ドイツ現代史研究会訳『ドイツの歴史家 第3巻』(1983・未来社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ランプレヒト」の意味・わかりやすい解説

ランプレヒト
Lamprecht, Karl Gotthard

[生]1856.3.25. イェセン
[没]1915.5.10. ライプチヒ
ドイツの歴史家。 1885年ボン大学,90年マールブルク大学,91年ライプチヒ大学の教授。 W.ブントの影響を受け,歴史学を政治史への偏向から解放し,社会心理学的な観点から文化史,経済史などの関連を主張。また原始社会から現代にいたるそれぞれの時代はある一定の象徴的,慣習的,精神的な特性をもつと指摘して,一種の発展法則論を展開,ランケ派の歴史家との間に論争を引起した。主著『ドイツ中世の経済生活』 Deutsches Wirtschaftsleben im Mittelalter (4巻,1886) ,『ドイツ史』 Deutsche Geschichte (19巻,91~1909) ,『歴史的思考入門』 Einführung in das historische Denken (12) 。

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