日本大百科全書(ニッポニカ) 「リンネ鉱」の意味・わかりやすい解説
リンネ鉱
りんねこう
linnaeite
いわゆる硫スピネル系鉱物の一つ。四三コバルト鉱という和名もある。理想式Co2+Co3+2S4を(Co,Ni,Fe,Cu)3S4と拡張した場合、括弧(かっこ)のなかでCo(コバルト)がもっとも多量になっていればこの名前でよばれる。理想式に近いものはまれである。多量に産する場合はとくに端成分から大きく外れている傾向があることもある。自形は正八面体がもっとも普通である。
深熱水性鉱脈型銅・ニッケル・コバルト鉱床あるいは接触交代鉱床(スカルン型鉱床)、正マグマ性鉱床に産する。日本では接触交代変成層状マンガン鉱床などから微量を産する。日本の産地では接触交代鉱床として岩手県釜石(かまいし)市釜石鉱山(閉山)、正マグマ性鉱床として北海道様似(さまに)町幌満(ほろまん)鉱山(閉山)、マンガン鉱床としては東京都奥多摩町奥多摩鉱山(閉山)などがあった。共存鉱物は黄銅鉱、磁硫鉄鉱、方鉛鉱、輝コバルト鉱、針ニッケル鉱、ポリディム鉱、閃(せん)亜鉛鉱、方解石など。同定は形態、黄鉄鉱よりは白色味の強い色による。黄銅鉱の集合中に含まれているものを風雨にさらすと、これを含まない黄銅鉱より早く虹色にさびる。命名はスウェーデンの博物学者カルロス・リンネにちなむ。
[加藤 昭 2018年12月13日]